シンデレラシリーズ完結
1.シンデレラと二人の王子
2.シンデレラと二人の魔女
3.白雪姫とサムライ
4.シンデレラと二人のプリンセス
5.シンデレラの夢(完結)
【登場人物】[1:1:1] [0:3] [0:2:1]
・シンデレラ:
・赤ずきん/ラプンツェル:
→赤ずきん サイコパス気味。
→ラプンツェル やさぐれ気味。面倒見はいい。
・ガブ(狼/ガブリーニ):イタリア男。女好き。イケボらしい。
少しうざいが悪い男ではない。
※約30~40分
※アドリブOK、ミュート禁止コメディ
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シンデレラ:いじわるな継母と姉たち、しつこいナルシストとツンデレな双子の王子。静かな暮らしを求めて山奥に来たはずなのに、今度は二人の魔女、昆虫オタクマザコンポンコツ王子、ヤンデレ王子と出会い。そして毎日やって来るオーロラ姫と白雪姫。
毎日のようにトラブルに巻き込まれる日々。
シンデレラは思ったのでした。
「誰も入ってこられない場所に引っ越そう」
【間】
……もう!誰かナレーションやってよ!
-し~ん
シンデレラ:むなし……
いやいや、わたしは引っ越して、また新生活をスタートさせるんだから!
探すわよ、いい物件!
【間】
シンデレラ:ん~、なかなかいい物件が見つからないわね。
いまみたいな木造平屋建てだと、侵入されやすい。
鍵をたくさんつけても、あの人たち、何をしでかすかわからないし。
石造りとかレンガ造りとか……?
それなら、たとえ、狼が来てもこわくないわね。
にしても、こんなことになるなんて、ほんと悪夢だわ。
わたしの描いていた夢ってなんだったかしら……
―バンビが、見たこともない野菜をくわえてやってくる
シンデレラ:あら、バンビちゃん。こんにちは。
そのお口にくわえているものはなぁに?
見せてくれるの?ありがとう。いいこね。
これは……、はじめて見るわね。
―森の中から「赤ずきん」が慌てて飛び出してくる。
赤ずきん:くっそ!!
シンデレラ:え?
赤ずきん:あ。(棒読み)キャー。
シンデレラ:まぁ、そんなに慌ててどうなさったの?
赤ずきん:助けてください。
おばあさんのお見舞いにいったら、お、お、狼が!
おばあさんの恰好をして、ベッドに寝ていたんです!
まさか、狼におばあさん、食べ……
シンデレラ:そんな!
とりあえず、私のウチに入って!
赤ずきん:ありがとうございます!
シンデレラ:よし、これを使うわよ。
赤ずきん:それは……?
シンデレラ:白雪姫の「推し」の狩人にもらったのよ。
「狩猟用」の刀。
赤ずきん:え?推し?
いま「白雪姫」って言いました?
シンデレラ:そう、狩人との結婚を反対されて、「推し活」にシフトチェンジしたの。
赤ずきん:理解が追いつきません。
シンデレラ:理解しなくて大丈夫。わたしもよくわからないから。
行くわよ、狼退治に!
赤ずきん:躊躇がない!頼もしい!退治するところを見たい!
シンデレラ:すこーしもこわくないわ!
赤ずきん:ちょっと聞いたことがあるメロディ。
―外に出るシンデレラ
狼:待って、待って!誤解だガブ!
シンデレラ:出たわね!
「ガブ」って、いかにもじゃない!
狼:これは口癖だガブ!
赤ずきん:うっざ。
シンデレラ:え?
赤ずきん:え?
シンデレラ:赤ずきんちゃん、いつの間に、わたしのうしろに……
赤ずきん:あ、あー!!
(棒読み)狼さん、狼さん。なぜ、あなたは、おばあさんの姿に変装しているの。
まさか……、おばあさんを食べ―
狼:食べてないガブ!!!!
おいら、おばあさんとは「ズッ友」
赤ずきんちゃんが来ると聞いて、ちょっとしたサプラ~イズで!
おばあさんは隠れているだけなので、安心してほしいガブ!
シンデレラ:そういって安心させて、この子も食べるつもりなんでしょう?!
赤ずきん:(棒読み)こわーい。しかも二足歩行だしー。
シンデレラ:ほんとだ。二足歩行。
狼:おいらは、ベジタリア~ンなんだガブ!
ベジタリア~ンは、二足歩行なんだガブ!!
赤ずきん:イミフ。ガブガブって、ほんっと鬱陶し。
ベジタリアン?は、嘘くさ。
狼:まずは、「護身用」じゃない超危険な刀をしまってほしいガブ!
シンデレラ:先に、あなたが、ベジタリアンな証拠をみせなさい!
狼:証拠……ええと……
あ!これ、おいらが好きな野菜だガブ。
シンデレラ:あら、その野菜はさっきバンビちゃんが……
狼:そう!バンビちゃんにあげたんだガブ。
バンビちゃん、かわいい!最高!
赤ずきんちゃん、かわいい!
ガブ!
シンデレラ:あなた、名前は?
狼:ガブ。
シンデレラ/赤ずきん:……
【間】
―以下、狼→ガブ
シンデレラ:なるほど。
赤ずきん:あ、こいつ、その野菜、子ヤギや子羊にもあげてました。
シンデレラ:あ、ロリコン?
ガブ:おいらは、ただ、小さい子が好きなだけだガブ!
赤ずきん:あんたの場合、違いがわかんないのよ。捌くわよ。
ガブ:ひどいし、怖いガブ……
シンデレラ:それより、私は、この野菜が気になるわね。
見たことがないのよ。なんていう名前の野菜?どこで仕入れたの?
ガブ:し、仕入れ?
ええと、これは「ラムズレタス」
子羊が好きな野菜なんだガブ。
シンデレラ:「ラムズレタス」?
ガブ:またの名を「ラプンツェル」
……だガブ。
赤ずきん:いま、語尾をつけ忘れそうになった。
ガブ:赤ずきん、見た目と違って、こわ。
あ、……ガブ。
赤ずきん:ほら、いまも。
シンデレラ:「ラプンツェル」……胸騒ぎ。
赤ずきん:お姉さま、大丈夫ですか?
シンデレラ:大丈夫よ。
ねぇ、この野菜、どこでつんできたの?
子羊が好きねぇ……
ふぅん(まじまじ)
赤ずきん:ものすごーーーく観察してる。これは素人の目じゃない。
そう、プロフェッショナル!
シンデレラ:くんくん。はむ。(味わう)なるほど……。
クセがなくて食べやすい。
そうね……、これは、
サラダやサンドイッチに入れたり、スープや炒め物に使えそう。
あとは、栄養素が気になるわ。
ガブ:β-カロテンやビタミンCなど栄養価が高いガブ。
「妊婦」が食べるといいと聞いた、ガブ。
赤ずきん:野菜ソムリエ?
シンデレラ:詳しいわね……
そう……
食べ物に詳しい人は信じてあげる。
赤ずきん:信じる基準!
す、すてきー
お姉さまは美しく、料理も得意なんですね!
そして、狼が少しでもあやしい動きをしたら、
その刀で腹をかっさばいて、石をつめこむんですよね!わくわく。
ガブ:この子、サイコパスだガブ!!
シンデレラ:普通の女の子が出てこないシナリオなのよ。
赤ずきん:さらっとメタいこと言わないでください。
ガブ:こ、この野菜があるところに案内するガブ!
森の奥に高い塔があって、そのまわりにたくさん生えてるんだガブ!
シンデレラ:その「物件」も気になるわ。案内してくださる?
赤ずきん:言うこと聞かないと、腹かっさばくわよ。
ガブ:この子、危なすぎ。
だ、ガブ。
赤ずきん:キャラ付け乙。
ガブ:……
赤ずきん:お姉さま、助けてくださり、ありがとうございました。
狼を捌かないなら、わたし「ラプンツェル」も「物件」も興味ないので、
ここでお別れしてよろしいですか?
シンデレラ:言い方よ……
え、ええ、まぁ、いいわよ。
一応、狼とは和解したし、大丈夫なはず。
赤ずきん:でも、日をあらためて、お姉さまのお宅に、お礼にうかがいますね。
マナーはきちんとするタイプ♪
シンデレラ:自分で言うのね。
ありがたいけど、やめておいた方がいいわ。
ここはね、狼より厄介なのが集ってくるところなのよ。
赤ずきん:どういうことですの?
ちょっとだけ、興味でました。
シンデレラ:あなたを見たら、
白雪姫とオーロラ姫が120パー(%)嫉妬すると思うの。
赤ずきん:え、え、その方々が遊びにいらっしゃるんですか!
動物としゃべれる3姫(スリー プリンセス)じゃん!
お姉さまって、もしかしてシンデレラ姫ぇぇ?!
「神7」(かみセブン)のひとり!
シンデレラ:「神7」ってなんなの。
赤ずきん:ラプンツェル、ジャスミン、ベル、アリエル、オーロラ姫、シンデレラ、白雪姫で「神7」(かみセブン)!!
……あ、
でも、ここにいるということは?
シンデレラ:(ため息)わたしは、ちょっと夢見て、失敗した、ただの一般人よ。
赤ずきん:遠い目をして……。その姿もいい!
シンデレラ:……
ところで、あなたは何歳かしら?
赤ずきん:(即答)12歳です。
シンデレラ:即答「じゅうに」……(がくぅ)
赤ずきん:お姉さま、しっかり!
シンデレラ:(呟く)私が19、オーロラが16、白雪が14……
赤ずきん:お姉さま?ものすごぉぉぉく負のオーラを感じます。
シンデレラ:な、なんでもないわよ。
それより、あなたは、おばあさまのところに行かなくていいの?
赤ずきん:そうでした!忘れてましたわ。すぐ行ってきます。
狼と組んで、私を驚かそうだなんて、なんて(BBA)
シンデレラ:え?
赤ずきん:「ひと言」いってきてやります!!
シンデレラ:目的がだいぶ変わったわね。
おばあさま、大丈夫かしら。
赤ずきん:今度、遊びにいきますね~!
シンデレラ:はーi……、いや、来なくていいってば!!
ガブ:それでは、おいらもこのあたりで―
シンデレラ:待ちなさい。
ガブ:ぎく!いや、ガブ!
シンデレラ:「ラプンツェル」が生えている場所と、物件案内が終わってない。
ガブ:はい……
シンデレラ:なによ。
ガブ:いえ。(ちょっとイケボ)では、まいりましょう。
シンデレラ:普通に喋れるじゃない。
どんな物件かしら。楽しみ♪
【間】
シンデレラ:かなり森の奥ね。
さすがに、こんなところまで来たことないわ。
ガブ:見えてきました。あれです。
シンデレラ:あれが?
予想以上に高い!
ガブ:塔の高さ、約15メートル。塔のモデルは「トレンデルブルク城」
現在は、誰でも泊まれる古城ホテルになっていて、塔の高さは、約38メートル。
いかがですか?
今度、僕と一緒に行ってみませんか。
シンデレラ:あなた……、別の意味の狼じゃない。
ガブ:幼い娘にはない、たくましさと、強さと、タフネス。
あなたは大変魅力的でー
シンデレラ:(かぶせて)あー!!
あれが「ラプンツェル」?すごーい!畑になってるじゃない!
ガブ:妻が妊娠している時に、食べさせました。「食」は大事です。
シンデレラ:え、「既婚者」狼?
ガブ:がっかりしました?
シンデレラ:いえ、全然。
ガブ:こどもたちと幸せに暮らしています。
シンデレラ:子持ち狼……
ガブ:「既婚者」の方が魅力的だと聞きません?
シンデレラ:その前に、狼とどうこうなろうとは思っていませんので。
それにしても、森の奥の奥の奥~にある高~い塔!
そして、ラプンツェルの畑!これは、いい物件!!!
ガブ:いまは空き家です。密会には最適ですよ☆
シンデレラ:誰と。
ガブ:少し前までは、美しく長い髪の少女が住んでいました。
名前はラプンツェル。髪の長さ、約21メートル。
シンデレラ:なっが!!
ガブ:その髪を、あの窓からおろし、夜な夜な王子と密会。
シンデレラ:え、ちょっ?!
ガブ:そして、身ごもりー
シンデレラ:童話にあるまじき展開ね。
ガブ:囚われの身だったのですが、そのおかげで、魔法使いに追い出されました。
彼女は、いま別の場所で暮らしています。
王子も、一時期病んで、王室から外れました。
いま彼女は、その元王子と、生まれた双子ベイビーと暮らしています。
シンデレラ:え、え、双子?!
ガブ:男の子と女の子の双子です。
ママのことをアイドルだと思って押し活してるんですよ。
妻は、とても美しい歌声なので。
二人が、ペンライトを振ってママを応援している姿は、
もう、食べちゃいたいくらい、かわいいんです。
シンデレラ:え、赤ちゃんも推し活してるの?
―ラプンツェルが探しながらやってくる
ラプンツェル:(きょろきょろ)
絶対ここにいるはず。
あ!
ガブ:っ!!
ラプンツェル:見つけた!やっぱりここにいた!!
ガブ:やばっ!(逃げようとする)
ラプンツェル:逃げんじゃねぇ!!!
くらえ、愛のペンライトーーーーっ!!
―後頭部直撃
ガブ:ごふぅっ!
ラプンツェル:バイトの最中にいなくなってんじゃないよ!
ガブ:いててて……(後頭部さすさす)
これ、ほんとにこれペンライト?
ライトセーバーかと思った……
ラプンツェル:バイトに戻れよ!
イベント中に抜けるってどういうこと?
みんな、めっちゃ怒ってんよ!
ガブ:赤いずきんをかぶったかわいい子を見つけて、つい。
ラプンツェル:またか……
ガブ:なぜ僕がこんな格好をしなくてはいけないんだ。
実物のが、かっこいいのに……
ラプンツェル:仕事なんだからしょうがないでしょ。
ガブ:汗くさい着ぐるみをきて、声を発してはいけない苦痛。
イケボなのに。
たまに遭遇する悪ガキに、理不尽に殴られ、蹴られ、
そして、周りを気にしながら着替える日々。
きつい!くさい!つらい!
しかも、バイト代がしょぼい!
シンデレラ:ワタシ、何も見テナ~イ、何もキコエナ~イ。
ラプンツェル:あ?誰、このカタコト女。
っ!てんめぇ、まさかっ!
-ガブの胸倉をつかむ
ガブ:ちがうっ!偶然出会って、住む場所を探してるというから、
僕たちの元「愛の巣」を紹介しただけだガブ!!!
ラプンツェル:焦ると語尾にガブつくの、わかりやす。
ガブ:いま空いてるから、いいじゃないか。
家賃収入になるよ☆
シンデレラ:あの、そろそろツッコんでいいかしら?
ラプンツェル:なによ、文句あんの?
シンデレラ:いえ、情報量が多くて……
まず、そこの狼さん。「ガブ」って言ったかしら。
実は狼ではなく、狼の着ぐるみをしていると……
まぁ、二足歩行だし、ぬいぐるみっぽいとは思っていましたけど。
ガブ:僕の名前は「ガブリーニ」さ。お嬢さん☆
―狼の着ぐるみの頭をとる
ガブ:よいしょっと。ふぅ。
シンデレラ:それで「ガブ」?
ガブ:チャオ☆
ラプンツェル:イタリア男だよ。
ガブ:そう。
人生は、「カンターレ(歌)」・「マンジャーレ(食)」・「アマーレ(愛)」
シンデレラ:「歌」と「食」と「愛」……
ガブ:ああ、汗くさい。
香水を、いや、女性のにおいをかぎたいな。
ラプンツェル:無視していいから。
シンデレラ:はぁ……
ガブ:つれない君も好きだよ☆
シンデレラ:あ、ちょっと近いんで離れてください。
ガブ:NO!!(ノォォオオ!!)
シンデレラ:それで、あなたは、ラプンツェル……?
ラプンツェル:そう。これアタシの旦那。
あんな高いところに閉じ込められてて、
もう暇すぎて暇すぎて、カラオケしてたら、
こいつが外から声をかけてきて。
ガブ:美しい声に惹かれてね。素晴らしい。カンターレ☆
シンデレラ:この塔に?どうやって?
ラプンツェル:アタシの長い髪を窓から垂らして、それをはしご代わりに。
シンデレラ:えええええ!
ひっぱられて痛くなかったんですか?!
ラプンツェル:そこはツッコんではいけないところ。
ガブ:金を紡いだような見事な長い髪だったね☆
ラプンツェル:18年も閉じ込められてたから、世間知らずだった。
アタシも「うぶな娘」だったってことよね。
で、こどもができてさ。
アタシを捕えていた魔法使いが怒って、アタシの髪を切っちまって。
荒野にポイよ。
シンデレラ:それは、魔法使いでなくても怒りますよ。
ガブ:僕は、いまも君の「プリンス」だぜ、アモーレ☆
シンデレラ:これが結婚……?
ラプンツェル:なに?
シンデレラ:だって、お互いよく知らないのに、いきなり、その……
あ、あ、あ~んなことや、こ~んなことになって……
家族計画も、まるでなってないですし……
しかも、荒野で暮らしてるって……
ラプンツェル:そりゃ、楽しいことばっかりじゃないよ。
共働きしてもお金は増えないし、夫婦喧嘩はするし、嫌になることもあるさ。
でも、こどもたちがいるから、頑張れる。
アタシたちは、あの笑顔を守りたいんだ。
苦労したけど、いまは楽しいよ。
ガブ:家族は宝だ☆
シンデレラ:これが結婚……
ガブ:君のことも、変わらず愛してるよ。ベル。
ラプンツェル:ベルって誰だよ!!また元カノの名前か!
ガブ:ノンノン。フランス語さ。「美女」という意味だよ。
そう、「女性」というだけで尊いじゃないか☆
ラプンツェル:ったくもう……
女とみたら、鼻の下のばすんだから。
シンデレラ:(ナレーション風に)と言いながら、人前でいちゃつくラプンツェルとガブリーニでした。めでたしめでたし。
ラプンツェル:なに現実逃避してんのさ。
シンデレラ:わたし、わからなくなってきました……
ラプンツェル:ん~……、事情はよくわかんないけどさ、
しばらくひとりで考えるのもいいと思うよ?
なんなら、この塔、たまに貸してあげる。
シンデレラ:え……
ラプンツェル:魔法使いはもういないし、大丈夫。
でも、たまにだよ。
ずっと、ひきこもったままはダメだからね。
ガブ:話したいことがあるなら聞いてあげるよ☆
シンデレラ:二人とも……
ありがとうございます。
わたし……
ラプンツェル:うん。
シンデレラ:毎日、一癖も二癖もある人たちがやってきて、うんざりして……
ラプンツェル:賑やかでいいじゃないか。
アタシはそういうの好きだけどね。
ガブ:君は、みんなに好かれているんだね。ベル。
ラプンツェル:(頬をめいっぱいつねる)ふん!!!
ガブ:ひてててぇぇぇ(痛てててぇぇぇ)
シンデレラ:これが結婚……
ラプンツェル:あ(手を離す)
た、たのしいよ?
ガブ:そ、そうさ。
痛いこともあるけど、毎日幸せだなと思ってるよ。
シンデレラ:……
森の暮らしは気に入ってます。
動物たちもかわいいし、自分で作った野菜は美味しい。
賑やかすぎることもあるけど……
ラプンツェル:うん。
シンデレラ:わたし、やっぱり引っ越すのはやめて、いまの家に戻ります。
ラプンツェル:そっか。
でも、つらい時は、ここ使っていいからさ。
ガブ:(興奮)え、遠慮しなくて、はぁはぁ……
いいんだよ、はぁはぁ……
ラプンツェル:下心を隠せぇぇぇぇ!!!(頬をつねる)
ガブ:ひあああああい!(痛ああああい)
シンデレラ:それに……
ラプンツェル:うん。
シンデレラ:こんな汚らわしい場所に入りたくありません。
ラプンツェル:うん?
シンデレラ:お二人のおかげで目が覚めました。
ラプンツェル:うん……
シンデレラ:それでは、失礼いたします。
ラプンツェル:う……、え?
ガブ:まだうぶなんだねぇ。子猫ちゃん☆
ラプンツェル:めっちゃ真顔だったけど……
ガブ:ああ、かわいい人、行ってしまうのかい。
ラプンツェル:あんたのことが嫌だったんじゃない。
ま、いっか。
さ、バイトバイト!ほら、ペンライト持って。
今日はアタシがステージで歌うんだから、盛り上げてくれないと。
こどもたちも、アタシが歌うのを待ってんだから。
ガブ:はぁ、アモーレ……(ちょっとガッカリ)
ラプンツェル:な、なによ。
ガブ:まったく……、ロマンチックじゃないなぁ。
塔にのぼらない?ウインク☆
ラプンツェル:バイトだっつーの。行くよ!
ガブ:ええ~。久しぶりに二人っきりになれたのに。
(ボソッ)だったら、さっきの彼女を誘えばよかった……
ラプンツェル:またそういうことを……!
……あ、そういえば、あの人の名前、聞いてなかったわね。
ガブ:ん~、「シンデレラ」って言ってたよ。
ラプンツェル:「灰かぶり」か……
ガブ:君だって「髪長姫(かみながひめ)」だろ。
ラプンツェル:まんまで大草原なんですけどw
【間】
シンデレラ:ちょっと!バカにしないでくださいません?
ラプンツェル:戻ってきた。
いや、バカにはしてないよ?!
シンデレラ:わたしは!
「王子様と結婚すれば幸せになれる」って思ってた!
でも、それはただの幻想だと気づいて、
「もう少しシングルライフをエンジョイしましょ♪」
「まずは自立!」って思って山奥に越してきて―
ラプンツェル:語りだした。
シンデレラ:そう思って、ここに来たんです。
もう、いろんなことがありました。
本当に、本当にいろんなことが……
でも、いつもひとりのような気がして……
……あれ
わたし……
ラプンツェル:ん~、あんた、友達がいないんじゃない?
シンデレラ:ズキッ!グサッ!ゲホッ!ガクッ!
ガブ:大丈夫かい。介抱してあげー
ラプンツェル:黙れ。
シンデレラ:……
(ナレーション風に)こうしてシンデレラは、たくさんの友人と素晴らしい環境にめぐまれ、強く、たくましく、幸せに幸せに、それは幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
【間】
ラプンツェル:いや、だから、ナレーションして現実逃避しないでよ。
あ~、アタシでよければ、なってあげてもいいけど?
「友達」に。
シンデレラ:「トモダチ」
……おいくつですか?
ラプンツェル:え、歳?
ギリ18(歳)もうすぐ19。
シンデレラ:ここに来てようやく同年代が……
でも、年上に感じる「おかみさん」のようなどっしり感。
ラプンツェル:いや、年齢、気にしすぎでしょ。
ああ、アタシのことは「ラム」って呼んでいいよ。
「ラプンツェル」って名前、長いでしょ。
シンデレラ:ラム?
ラプンツェル:「ラムズレタス」の「ラム」
歌うときもその名前にしてるんだ。
ガブ:(ペンライト振りながら)ラムちゃん!こっち向いて!!
シンデレラ:なるほど、「推し活」ですね……
わたしの名前は、どうにも略せないので、そのままで結構です。
ラプンツェル:じゃ「シンデレラ」?
シンデレラ:はい。
ラプンツェル:よろしくね。
シンデレラ:よろしくお願いします。
ラプンツェル:かたいなぁ。友達なんだからさぁ。
シンデレラ:そう言われましても……
えっと、ラプn……、ラムさんは、今日は、何を歌うんですか?
ラプンツェル:「ハクナ・マタタ」
知ってる?
シンデレラ:いえ。何語ですか?
ガブ:アフリカの言葉で「どうにかなるさ」とか、「くよくよするな」という意味ですよ。
ラプンツェル:そ、どうにかなるっしょ!
ああ、よかったら聞きにおいでよ。
ガブ:はい、これ、ペンライト☆
ラプンツェル:「推し活」も楽しいよ。
「推し」をつくってみたら?
シンデレラ:推し……
ラプンツェル:……ん?
あ、空。
シンデレラ:え、なにか飛んでる。絨毯?!
ラプンツェル:アラジンとジャスミン!
ガブ:相変わらずラブラブだねぇ。
シンデレラ:もう、何が起きても驚かないぞ。
ラプンツェル:今日、あの二人も歌うんだ。
シンデレラ:そうなんですか?
ラプンツェル:そう。
もう、デュエットがえげつないくらいうまい。
負けられないね。楽しくなってきた!
さ、アタシらも行くよ!!
―シンデレラの手を握る
シンデレラ:あ!
ラプンツェル:あれ、ダメだった?
シンデレラ:いえ、……ふふふ。
ガブ:やっと笑った。
やっぱり、女性は笑顔が最高に美しい。
つらいことがあっても、最後は笑顔でいるんだ。
シンデレラ:つらいことがあっても……
ガブ:そうだ、君の歌声も聞きたいな。
ラプンツェル:そうだ。歌いなよ!スッキリするよ!
シンデレラ:あ……
わたし、いつも歌ってました。
実家にいたときから、ずっと。
ラプンツェル:へぇ、なんて歌だい?
シンデレラ:……
どんなに心が傷ついて悲しくても
信じ続ければ 夢はきっと叶う
そんな歌です。
ラプンツェル:へぇ、いいじゃない。
で、夢は?
シンデレラ:そうですね……、いまは、
ラプンツェル:うん。
シンデレラ:ラムさんとユニットを組んで、アイドルになります!
わたしは!
推し活するのではなく!
推されたい!
ラプンツェル:まじかー
こちとら子持ちだけどー
なれっかなー
アイドル。
ガブ:こ、このユニットは!売れる!!
子持ちアイドル、いける!!
シンデレラ:いけます!
ラプンツェル:ん~、やれるだけやってみるか。
シンデレラ:はい!
ラプンツェル:あんたが元気になれるんなら、アタシも頑張るよ。
シンデレラ:さぁ、行きましょう。
わたしたちのステージへ!!
【終演】
参考♪「夢はひそかに」
”A dream is a wish your heart makes”
A dream is a wish your heart makes
(夢はあなたの心の中の願いが作り出したもの)
When you’re fast asleep
(あなたがぐっすり眠っている時にね)
In dreams you will lose your heartaches
(あなたは夢の中で胸の痛みを忘れるでしょう)
Whatever you wish for, you keep
(どんな願いであろうともそれを持ち続けて)
Have faith in your dreams and someday
(夢を信じ続けていればいつか)
Your rainbow will come smiling through
(あなたの虹が微笑みかけるわ)
No matter how your heart is grieving
(だから、どんなにあなたの心が傷ついて悲しくても)
If you keep on believing
(あなたがもし信じ続ければ)
The dream that you wish will come true
(あなたの願う夢はきっと叶うでしょう)