サマーカーニバルへの招待状【朗読】~音楽コラボ朗読~

サン=サーンス「動物の謝肉祭」より抜粋

第1曲:序奏と師子王の行進曲

第4曲:亀

第7曲:水族館

第11曲:ピアニスト

第13曲:白鳥

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僕:

ああ、今日もうまくいかなかった。

「なんにもできない、のろま」だって……


どうして僕は何をやってもうまくいかないんだろう。

みんなも、僕のことなんか、ちっとも気にしてない。

すっかり置いてけぼりだ。


(ため息)ただいま……。


「学校、楽しかった」かって?

楽しくなんかないよ。


え、僕に手紙?

誰からだろう。


名前が書いてない。


『サマーカーニバルへの招待状』?


【場転】♪第1曲「序奏と師子王の行進曲」


うわっ!なんだ、この音。

どこから聞こえてくるんだ?


うわぁ!景色が変わる?


(目をつむる)

【間】

(おそるおそる目を開ける)……


わぁ、すごい日差しだ。

暑い!

ここは?どこ?

(見渡す)

大きな公園?

いや、違う、目の前いっぱい草原地帯だ……


ん?あれは……。

何かがこっちに来る。


ら、ライオン、ライオンの群れだ!

どうして、ここに?

どこかに隠れないと!


メスの群れ?

すごい、すごいぞ。

こんな間近でみたことがない。

うなり声で、大地が揺れるようだ……


あ、あれは!ライオンの王様だ!


立派なタテガミ

堂々とした歩き方

勇ましい姿


あ、ライオンのこどもたちが、じゃれあっている。

なんて、かわいいんだろう!

優しいお母さんと、強いお父さんに見守られて、安心だろうなぁ。


そうか……

群れで、小さい子を守っているんだ。


僕は「ひとりぼっち」で「のろま」だから、みんなにいじめられるんだ。

僕も、ライオンの王様みたいに、勇ましく立ち向かう勇気がほしいよ。


【場転】♪第4曲「亀」


ん?

やぁ、亀さんだ。こんにちは。

キミも歩みがゆっくりだね。僕と一緒だ。

どこに行くんだい?

ああ、暑いから日陰に行くんだね。

一緒に歩こうか。


(しばらく歩く)


あれ?亀さん?


あ、あんなに後ろに。


ごめん、僕がはやく歩いちゃったね。

本当にごめん。


……怒らないの?


キミは言い返したり、あきらめたりしないんだね……


そうか。人生は「かけっこ」じゃないんだ。


キミはひとりでも、ゆっくりでも、しっかりと歩いているね。

すごいな。


ああ、もし一緒に歩きたかったら、

キミのスピードに僕が合わせればいいんだよね。


【場転】


強い人もいれば、弱い人もいる。

はやい人もいれば、ゆっくりな人もいる。

でも、どっちが悪いってことじゃない。

互いが補い合っていければいいんだ。


【場転】♪第7曲「水族館」


また景色が変わる?

ここは、海の中?!

大変だ、僕、泳げないんだ!


息ができ……てる?

それに、普通に歩けるぞ。

うわぁ、きれいな色の魚たちがたくさん泳いでいる。

なんてカラフルな世界なんだろう。


それに比べて、僕の世界は、白黒だ……


あ、イソギンチャクだ。

たしか、イソギンチャクには毒があるんだよね。

気をつけよう。


あれ?

イソギンチャクから、顔を出したり隠れたりしている魚がいる。


危ないよ。触らないほうがいいよ!


え?だいじょうぶ?

キミの名前は……


「クマノミ」?


イソギンチャクに守られているの?

そのかわり、自分が近くを泳いで新鮮な海水を送って、元気にしている?


そうだったんだ!


まったく違うふたりなのに、協力しあって生きているなんてすごいなぁ。


僕は……、「守られることだけ」を考えているのかもしれない。


【場転】♪第11曲「ピアニスト」


また場所がかわったぞ。

ここは……、人間の世界だ。

うわぁ、ひどい音だなぁ。

自分の意見ばかり押し付けるからそうなるんだ。


ねぇ、喧嘩をしないで。

どうやったらうまくいくか、お互いに考えないといけないよ。


もっと相手の声に耳を傾けてあげてよ。

まずは息を整えて、相手を見て、表情を見るんだ。


自分が持っているものを相手がうまく受け取れるように、

やさしく差し出して、お互いに歩み寄ることはできるだろう?


そう。その調子。

いいね、息がぴったりだ!

仲直りできたようでよかったよ。


【場転】


ライオン、鶏、ロバ、亀、象、カンガルー、海の中の生き物たち、

森の奥のカッコウ、小鳥たち。

地球はほんとうに生き物がたくさんで、みんなたくましい。

群れで行動しているものもいれば、協力して生きているものいる。

世界は美しくて、カラフルだ。


そうだ、化石もみたぞ!


一番喧嘩していたのは……、人間だったな。


いろんなものを見せてもらって、

できることもわかってきた気がする。


うん……!

僕、いじけないで、やってみる。

招待状をくれた人、本当にありがとう!


ぐるぐると不安でいっぱいだった気持ちが、

穏やかになってきた気がするよ。


まるで、水面を優雅に泳ぐあの鳥のように―


【場転】♪第13曲「白鳥」



-終-

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