さくらの約束【ファンタジー】[0:1:1]

【登場人物】[0:1:1]

■愛美(まなみ):一人っ子で、わがまま。8歳から25歳まで。

■まろ:人の子を育てる猫神。

■白猫:譲渡会にいる白い猫神。愛美役が兼ねる。

ワガママ娘と猫との出会い。そして成長。
心を通わせていくファンタジー。

テーマ「さくら猫の日」3月22日にちなんで。
猫の殺処分ゼロを目指す公益財団法人「どうぶつ基金」は、不妊手術を終えた猫の耳先を、目印としてさくらの花びらの様にカットした「さくらねこ」のことを全国に広げるために3月22日を「さくらねこの日」と制定しました。

※約50~60分
※ファンタジー
#オンリーONEシナリオ2022

-----【本編】------------------------------------------------------------------------


まろ:吾輩は猫である。いや、「猫族」は「神」である!

つまり、「人の子が猫を飼っている」のではなく、吾輩たち「猫族が人の子を飼っている」のである!なので、猫族が同居する人の子を「選んで」やっていることを忘れてはならにゃい!そう!猫族がいる者は、「選ばれし者」なのだ。大変名誉なことゆえ、胸を張っていいにょだ。

まろ:我々、猫神は忙しい。「寝てばかり」「自由で羨ましい」などとほざいておるが、いつも人の子を見守っておるにょだ!まあ、「見張られている」などと勘ぐられないように、うまぁくごまかしているゆえ、好きに言わせておく。

さて、前回の人の子の世話も終えて、いま天から見ているが、次なる願いごとが「猫返し神社」から届いている。なになに?「8歳の娘の世話をしてほしい。娘の名前は愛美(まなみ)」両親の年齢は、父40歳、母36歳。

「結婚後、なかなか子どもができず、10年目にしてようやく子宝に恵まれた」と。ふむふむ。読めてきたにょ。

「はじめての子どもに、家族、親族一同大喜び。特に、両方の祖父母が初孫を『目に入れても痛くない』ほどかわいがり、どんなお願いも聞いてやり、姫のような扱い。

おかげで、勝気な性格でワガママに育ってしまい、周りが言うことを聞かないと癇癪(かんしゃく)を起こすようになる。友達ができず、ひとりで遊んでいることが多い」

あるあるだにゃ。どれ、どの娘(むすめ)かの?


愛美:あ、このワンピースひらひらしてて、色も模様もかわいい!お姫様みたい!ねぇ、おばあちゃん、アレ買って!あのワンピースも、愛美に買ってほしいって言ってる!

いくら?って、9、8、でゼロが2つ!いいでしょ?買ってくんなきゃ、もうおばあちゃんとお出かけはしないもん!

まろ:なかなか強烈な娘だにゃ。あ~あ、あっさり買い与えてしまったぞ。やれやれ。

愛美:ピーマン、ナス、ニンジン嫌い!トマト、タマネギ、かぼちゃ嫌い!お豆腐も、牛乳もいや!それからー

まろ:ふーむ、子ども時代、好き嫌いは多いが、それにしても嫌いなものエンドレスか?いったい何を食べておるのじゃ。

まろ:願いごとの続きは……「下に兄弟がいればまた違ったのかもしれないがー」

いやいや、それは関係にゃい。自分たちの育て方ゆえ、と書いているではないか。すぐに言い訳をするのが人の子の悪い癖にゃ。

「せめてペットでもいればー」

まろ:相変わらず、この「ペット」と言い方には慣れにゃい。軽々しいのだ。無責任な輩もおるからの。全く許しがたい。

さて、今回はどうやってこの娘の前に現れるかだがー。やはり子猫の姿がよいかのぅ。一瞬で、人の子のハートを射抜くことができる。

ん?ほう、月に一度行われる「譲渡会」に行く予定か。にゃるほど。では、そこに紛れ込むとするかにょ。

【間】

ー譲渡会会場

まろ:いやはや、今回も仲間がいっぱいおるの。

白猫:もしやあなたはー、

まろ:ん?

白猫:猫神冠位十二階(ねこがみかんいじゅうにかい)の「紫の命大徳」(むらさきのみことだいとく)様では?

まろ:「紫」でよいぞ。よくわかったの?

白猫:まとっておられる色が濃い紫ですにゃ。紫様にここでお会いできるとは……。

まろ:そういうお主は、「白の命大義」(しろのみことたいぎ)か?

白猫:はい。

まろ:ふむ、白猫にしかまだ変化(へんげ)できないのじゃな。

白猫:お恥ずかしい……。

まろ:何も恥ずかしいことなどにゃい。美しい白じゃ。吾輩にもそういう時はあった。経験を積んで、冠位があがっていくものだからにょ。

おや、片耳の先が切れて……、ああ、そうか、さくら耳か。

白猫:はい。野良猫のふりをして向かっていたところ、ボランティアとやらに捕まってしまい、一番行きたくにゃい場所に運ばれまして、このように……。

まろ:あそこか……。まったくおぞましいのぅ。診察台とやらに乗せられて、白衣を来た人の子が身体を触りまくる。失礼極まりない。だが、最低一度は行かねばならない。こればかりは仕方がないにょ。

白猫:痛くはないものの、自慢の耳が……。

まろ:うむ……。悪くはないぞ。で、今回、そなたの対象者は?

白猫:65歳、女性。白い猫神と夫と三人暮らしだったそうですが、その白猫神が役目を終えて、天に戻ったにょです。その後、夫にも先立たれ、家からも出なくなり、近所の人と会話もしなくなったそうですにゃ。それで娘夫婦が心配して……。

まろ:にゃるほど。

白猫:ああ、ちょうど来たようです。では失礼して、アピールをしますにゃ。

ーニャーニャー鳴く

まろ:おーおー、一目散に来おったの。

白猫:アピールはうまくにゃりました。

まろ:早速、ケージが開けられたにょ。

白猫:次は、くっついて離れないアピールをしますにゃ。

まろ:うむ、決まったにゃ。

ーケージに戻る

白猫:すぐ決まりました。譲渡はまたあらためてですにゃ。

まろ:すぐに連れて帰りたいのだろうが、しっかり世話をする契約をしてからでないと安心していけないからにょ。見よ、あの帰る姿。あれが人の子の世でいう「後ろ髪を引かれる」というやつだにゃ。

白猫:して、紫様は?

まろ:8歳の愛美という娘じゃ。わがままが過ぎるようでの。両親からの願いが届いた。お、ほれ、来た来た。

白猫:あちこち覗いていますにゃ。落ち着きのない娘のようで。紫様は、アピールなさらないにょですか?

まろ:吾輩ほどの冠位になると、アピールせずとも、向こうが見つけ出すからのぉ。

白猫:さすがでございます。

まろ:お、来よった。

愛美:パパー!ママー!来てきて!この子の顔!

まろ:どうじゃ、吾輩はかわいいじゃろ?

愛美:目の上に黒い模様がある!アハハ、おっかし~い!

まろ:……まっこと失礼な娘じゃの。

白猫:紫様を笑うとは失礼にもほどがありますにゃ!シャーッ!

まろ:まぁまぁ、怒りをおさめられよ。

愛美:わっ!隣の白い猫、怒ってる!耳も切れてるし、なんかやだぁ!

まろ:無知ゆえの発言であるからにょ。

白猫:この娘を育てられるのですか?これは大変な仕事になりますにゃ……。

まろ:なんの。やりがいがあるというものじゃ。親が来たぞ。特に母親は甘い。母親を見つめ、目が合ったら首をかしげる。

白猫:あ~、それは一発で陥落ですにゃ。

まろ:こうじゃ。

愛美:かわいい!!パパ、ママ!私、この子がいい!

まろ:ちょろい……。さて、お試し抱っこじゃ。ぐぅ!痛い!強く握るでない!持ち上げるにゃ!

愛美:あ、ピー!って鳴いちゃったぁ!もっと優しくそーっと?こう?お膝に?

まろ:そうじゃ。サービスにゴロゴロ鳴らしてやるかの。

愛美:ねぇ、なんか音がする!喉かな?怖くて震えてるの?大丈夫、怖くないよ?

まろ:甘えてやっておるのじゃ。あともう少し小さい声で話せ、やかましいぞ。

愛美:気持ちいいっていうこと?小さい声で、そっと話しかけるの?

まろ:それにしても、やはり子どもは温かいの。少々眠くなってきおった。

愛美:(小声で)あ、寝てる。かわいい~。(だんだん声が大きくなる)ねぇ、この子にしよ?連れて帰ろ?お願い!おねーがーい!

まろ:出たな、ワガママが。今日はよいが、うるさいぞ。契約してからじゃ。離せ!

愛美:暴れてる!どうしよう!

まろ:こら!吾輩をケージに戻せ!

ーケージに戻される

まろ:やれやれ。先が思いやられるのぅ。契約しに行ったか。第一歩じゃな。「白の命(しろのみこと)」殿……、は寝ておるか。眠くなる時間帯であるからの。しかも、この雰囲気、疲れるのじゃ。どれ、吾輩も寝るとするかにょ。

―引き渡しの日

―まろ、愛美の家に到着

まろ:ここか。いよいよじゃな。

愛美:キャー!!来た来た!!

まろ:う、うるさい……。

愛美:ママ、ケージを開けていい?やった!さ、出ておいで―。にゃんこちゃん。怖くないよ~。抱っこしたい!抱っこしたい!!

まろ:まずは確認じゃ。しばらくひとりで歩かせよ。どこに何があるか。くんくん……。あとは逃げ場の確認。冷蔵庫の上。ベッドの下。タンスの裏……。ふむ。だいたいわかったぞ。

愛美:まろ!!

まろ:うげっ!腹をつかむなっ!

愛美:あなたの名前は「まろ」だよ。ほら、鏡をみてごらん?

まろ:鏡か……。はじめて見た時は、吾輩がもう一人いる!とびっくりしたもんじゃ。

愛美:目の上に、黒くて丸い模様があるでしょ?「まろ眉」って言うんだよ。身分が高い人が使ってたことがあったんだよ。

まろ:ほぉ?高貴な名前か。吾輩にぴったりじゃな。コホン。「吾輩は猫である。名前はまろ」。……うむ。いい感じだにょ。

愛美:トイレはここだよ~。

まろ:どれ。

愛美:え、すごーい。一回で覚えたー。まろ、賢い!!

まろ:人の子は、自分でトイレができるまでに時間がかかるのじゃろ?我らにとっては、このくらいのこと当り前じゃ。

愛美:お腹すいてない?ほら、用意してあるよ。

まろ:いまは昼か。くんくん。ふむ。どれ。

愛美:食べたー!!ママー、まろがご飯食べたよー!!

まろ:まぁまぁ美味かったぞ。供え物。

愛美:まろ、見て。お外、桜が咲いてるよ。きれいでしょー。ほら、手が届くんだよ。

まろ:せわしないのぅ……。桜か。ああ、桜はいつ見てもいいのう。風情がある。

愛美:愛美ね、4月から3年生になるんだ。今度はお友だちができるといいなぁ。

まろ:そうか。それには、お主にも努力が必要なのじゃぞ。

愛美:最初はね、「さくら」って名前にしようかと思ってたの。でも、男の子だって知って、顔を見てたら「まろ」って思いついて。どうかな?気に入ってくれるといいんだけど……。

まろ:ああ、よいぞ。(ペロ)

愛美:あ……、まろがなめてくれた。「いいよ」ってこと?

まろ:(ペロ)

愛美:ありがとう!!まろ!わたしね、パパとママに約束したの。わたしがまろのお世話をするって。最後まで絶対みるって。

まろ:そうか、頼むぞ。桜か……よし。

―まろ、桜の花をくわえる

愛美:あ、桜の花食べちゃうの?いいのかな……。

まろ:ほれ。お主にやる。

愛美:え、くれるの?

まろ:ああ、「桜の約束」じゃ。毎年、桜を見て、今日の約束を思い出すのじゃぞ。

愛美:まろ、ありがとう!

【間】

まろ(M):それから、愛美は学校からすぐ帰ってきて、吾輩を愛(め)でるようになった。

【間】

愛美:よし、トイレは片づけた。先に宿題やっちゃおう!まろ、待っててね!

まろ:うむ。よい心がけじゃ。それまでしばらく寝るとするか。

【間】

愛美:まろー。宿題終わったよ!

まろ:(あくび)うーん、体をのばしてー。

愛美:準備体操?

まろ:ま、そういうとこじゃ。ほれ、これで遊んでやるぞ。

愛美:すごーい。自分でねこじゃらし持ってきた!これで遊んでほしいの?

まろ:違う、遊んでやるのだ。

愛美:いいよ、遊ぼ!まろは、おりこうさんだなぁ。

まろ:トーゼンじゃ。

愛美:だーいすき。ちゅっ

まろ:う……、それはあまり好きではない……。

愛美:あー、まろのいい匂い。安心する~。

まろ:やれやれ、もう猫吸い(ねこすい)の味を覚えてしまったか。ま、よかろう。これでお主が安心するのであれば。

【間】

愛美:あ、もうこんな時間。ご飯の用意してくるね。待っててね!

まろ:供え物の時間か。うむ。

愛美:今日は特別だよ~。まぐろのエビ添え。はい、どうぞ。

まろ:む?くんくん。うーむ。

愛美:あれ、食べないの?あ、まぐろだけ食べて残しちゃった。まろ、好き嫌いはダメだよ。

まろ:お主に言われたくないにょ。

愛美:「ニャンプチ」なのに。高いんだよ?

まろ:高ければいいというわけではにゃい。

愛美:ママー、まろがエビ残しちゃった。嫌いなのかなあ。「愛美も好き嫌い多いじゃない」って……、そうだけどぉ…。「工夫」……?とりあえず、今日はエビはよけて、まぐろだけにしてみる。まろ、これならいいでしょ。

まろ:む、少し乾いてきておるぞ。いらぬ。新鮮な供え物をだすのじゃ。

愛美:食べない……。わがままはいけませんよ!

まろ:猫神を叱るとはいい度胸だ。しばらく隠れてやるにゃ。

ー逃げる。

愛美:あ、まろ!!

まろ:ここなら見つかるまい。

愛美:どこ?どこ行っちゃったの?愛美が怒ったから?まろー、ごめん。怒ってごめんねー!だから出てきて。

まろ:しばらくお仕置きじゃ。

愛美:まろ……。ママ、どうしよう。落ち着いたら出てくる?ホント?愛美が、わがままはいけませんって怒ったから……あ、パパ。おかえりなさい……。あのね……(事情を話す)

愛美が騒いだり、不安になってると出てこない?わかった……。

愛美もご飯、食べる。いただきます……。あ、ピーマン入ってる、これ嫌い!……って、好き嫌いダメだよね。頑張って食べてみる。

まろ:ほぉ、嫌いなものを食べおったか。よいよい。もう少ししたら出て行ってやるかにょ。

愛美:ごちそうさまでした。ママ、工夫してくれたんだね。ピーマン食べれたよ。ありがとう。愛美も、まろのために工夫してみる!

まろ:にゃ~お

愛美:あ!まろ!さっきはごめんね。もう怒らないから。

まろ:(スリスリ)

愛美:スリスリしてくれた……。許してくれるの?

まろ:(スリスリ)

愛美:また……。まろは優しいね。ありがとう。あれ、そういえば、猫はお風呂に入るのかな。

まろ:それは入らぬ(はいらぬ)!断固拒否する!!

愛美:って、勝手にやったらまろが拗ねちゃいそうだからやめとこ。じゃあ、愛美はお風呂入ってくるね。

まろ:やれやれ。

愛美:知らないことばっかり。猫のこともお勉強しなくちゃ!

ー愛美、風呂へ

まろ:ふぅ~。疲れたにょ。ケージに戻って寝るとするか。あ~、いい感じのベッドじゃ。ふみふみしてちょっと慣らして、と。よっこらしょっと。すぅ~……

【間】

愛美:まろー、お風呂出たよー!一緒に寝よー!

まろ:来たな……。寝たふりじゃ。

愛美:抱っこして寝てあげるよー!

まろ:それはまだ早い!お主の寝相が悪くて、潰されたらかなわん!

愛美:あ、ケージで寝てる。まろ、一緒に寝よう。

まろ:一緒に寝るのは信頼関係ができてからじゃ。

愛美:ママー、出しちゃダメ?自分で来てくれるまでガマン?……そっか。

まろ:そうじゃ、自分の気持ちを押し付けてはならぬ。

愛美:わかった。じゃあ、まろ。おやすみなさい。また明日ね。

まろ:うむ。

【間】

ーしばらく、まろの食事の工夫が続き、数週間後。

愛美:今度こそ!まろ~、ご飯の時間だよ。ほら、見て。

まろ:お、お!この匂いは!かつお節~!!

愛美:食べた!

まろ:うまうまうまうま……。

愛美:喋った!美味いって!

まろ:空耳じゃ。しかし、人の子はそんなで喜ぶからの。本当にちょろい。

愛美:やったー!全部食べてくれた!まろ、いい子いい子!

まろ:うむ。顔を洗うとするか。

愛美:この仕草がたまらない!猫がキレイ好きなんだって知らなかったぁ。

まろ:ようやく吾輩の愛で方(めでかた)がわかってきた頃かの。

【間】

まろ:吾輩の体もひと回り大きくなった。このうちに来て半年くらいか……。そして、この暗雲漂う雰囲気は……。

愛美:まーろちゃん、ここに入って。

―キャリーバッグを持ってくる愛美

まろ:出た!

愛美:あのね、病院に行ってー

まろ:その続きは聞きたくない!!

愛美:嫌がってる!

まろ:当たり前じゃ!これだけは、何度やっても慣れん!

愛美:ママ!助けて!

まろ:助けてほしいのはこっちじゃ!!ああ、ママ殿まで加勢するか!しまった!

ーキャリーバッグに入れられる

まろ:万事休す……。

愛美:大丈夫だからね!

まろ:お主はわかってないから、そんな軽くいうが、これは一大事なんじゃ!

【間】

ー動物病院から帰宅

愛美:うわ~~~~ん!!まろぉ~~!!ごめんね~~!!

まろ:うるさい……。まだ麻酔が効いておる。

愛美:エリザベスカラー、かわいいけど~~!

まろ:この屈辱感……、お主には一生わかるまい。

愛美:切ったところがおさまるまで、遊ぶのガマンするね……。

まろ:ああ、そうしてくれ。

愛美:ご飯食べる……?

まろ:いまはいらぬ。

愛美:うわ~~~~ん!!

まろ:泣くな、うるさい!ママ殿、なんとかしてくれ!んん?「愛美も風邪ひいたら病院にいって、お薬もらって、静かに寝て治すでしょ」って、ちょっと違うが……。パパ殿は……、なんとも言えん顔をしとるの……。

愛美:わかった。まろ……。

まろ:うむ。

愛美:ううう……、まろぉ~~!!ごめんね~~!!

まろ:全然わかっておらんな。(ため息)

【間】

まろ:愛美も3年生とやらになった。だいぶ吾輩の扱いに慣れてきたが、もう少しじゃな。

愛美:ただいまー!

まろ:お、帰ってきよった。

愛美:まろ!ただいま!今日もかわいいね!

まろ:そうじゃろ?

愛美:あのね、今日、クラスの女の子に「猫を飼ったんだ!」って話したら、「見たい」っていう子がいてね。うれしくって連れて来ちゃった!

まろ:うるさいのが増えるのか……。友だちができたのはよいことじゃが……。

愛美:かおるちゃん、こっちこっち。ほら、見て。かわいいでしょ~。

まろ:頼むからキャーキャー言わんでくれよ……。ん?おとなしい子じゃの。くんくん。

ああ、猫神がいるのか。おや、この匂いは……、「白の命大義」(しろのみことたいぎ)を連れていった家族じゃな。おお、瞼で挨拶か。よぅ、わかっておるのぅ。よし、吾輩も挨拶するかにょ。

愛美:かおるちゃん、何してるの?声を出さないで挨拶?ええ~、どうやるの、教えて!

まろ:かおる殿、教えてやってくれ。相変わらずせわしないからの、愛美は。

愛美:長い時間、見つめると怖がるから、視線を合わせて「ゆっくり瞬き」すると安心する?知らなかった!どうやるの?

まろ:そうか、かおる殿のところは、前も白い猫神と暮らしていたと言っていたな。にゃるほど。

愛美:猫と視線をあわせて、瞼をゆっくり閉じたり開けたりするの?わかった、やってみる。まろ~。

ーゆっくり瞬きをする

まろ:吾輩も返すぞ。ほれ。

愛美:まろもやってくれた!え?「信じてるよ、安心してるよ」ってサインなの?

まろ:そうじゃ。いきなり距離を詰めてくるのはダメなのじゃ。

愛美:そしたら、こっちから近寄らないで、手を出す?うん、わかった。はい、まろ。(手を出す)

ーまろ、ケージから出てきて、愛美に近づく。

愛美:まろから来てくれた……。いままでは、わたしが抱っこしないと触れなかったのに。

まろ:愛美は無理やりすぎるのじゃ。かおる殿にも挨拶しとくか。

ーまろ、かおるにスリスリ。

まろ:おお、かおる殿は撫で方もうまいの~。これは気持ちがよい。愛美もよく見て覚えるのじゃぞ。

愛美:すごい気持ちよさそうな顔してる~。どこを触ると気持ちいいの?かおるちゃん、教えて。

まろ:「猫好きの友は生涯の友」になるぞ。愛美、かおる殿を大切にするのじゃぞ。

ーごろ~ん

愛美:わぁ、お腹見せてくれたぁ!お腹もっふもふ。触ってもいいのかな。

まろ:さぁどうする?かおる殿。

愛美:しっぽを見るの?パタパタしてる。もうやめた方がいいサインなの?そっか、それで、この前「猫パンチ」されたのかぁ。

まろ:「教育的指導」じゃ。かおる殿はさすがじゃの。これは礼をせねば。

ーまろ、走っていく

愛美:あ!まろ!……ぐっ、追いかけない、追いかけない。ガマン。え、かおるちゃんちにも、猫ちゃんがいるの?……今度、遊びに行ってもいい?ホント?やったぁ!

ーまろ、戻ってくる

愛美:まろ、戻ってきた。あ、桜……。

まろ:二人分じゃ。ほれ。

愛美:「桜の約束」だね。かおるちゃん、これね「わたしがまろのお世話をする。最後まで絶対みる」って約束のしるしなんだ。

まろ:うむ。

【間】

愛美、中学三年生。15歳。

まろ、7歳。


まろ:ほれほれ。起きろ、愛美。

愛美:う~ん。まろ~?まだ早いよう。いま何時?5時……。

まろ:供え物をよこせ。ほれほれ。起きるまでやるぞ。

愛美:わかったわかった。起きるって。もう。そうやって、首かしげたりして……。かわいいのずるい。

まろ:かわいいは正義じゃ。

愛美:でも、やっと一緒に寝てくれるようになったんだもん。うれしい。

まろ:お試しで寝たら、やはり寝相が悪かったからにょ。

愛美:最初は足元で、次は脇腹あたり。そして脇。いまは、寝ようって誘ってくれるもんね。お布団にも入ってくるし。

まろ:これも信頼の証じゃ。

愛美:まろ、私のこと好き?

まろ:毎日何回聞けば気が済むのじゃ。しかし、まぁ?

ースリスリ

愛美:うふふ。(ナデナデ)わたしも、まろのことが、だいだいだーい好き!

まろ:吾輩も、いまの愛美は好きじゃ。

愛美:ということで~、もう少し寝かせて!(ガボッ)

まろ:フェイント!そう来るか……。それなら吾輩にも考えがある。

ーベリッ ビリッ ベリベリッ!

愛美:この音はっ!(ガバッ!)ギャー!宿題のプリントが紙吹雪にー!!もー、まろー!

まろ:いやぁ、桜吹雪はきれいじゃのう。

愛美:え、桜の形に……。器用すぎる……。

まろ:神だけに。

愛美:なんかドヤ顔してない?でも……「桜の約束」。わかった。私の負けです。よいしょっと。

まろ:人の子が吾輩と知恵比べするなど無駄なことよ。

【間】

ー登校前

愛美:まろ、ちょっと部活で遅くなるけど、ダッシュで帰ってくるからね!

まろ:ああ。よいよい。

愛美:吹奏楽部、地区大会がもうすぐなんだ。協調性が大事、息の合った演奏をして金賞とるんだから!

まろ:協調性か……。昔のワガママ姫はどこへやら、じゃの。若い時に熱中するものがあるのはよいことじゃ。いましかできんかもしれんからの。

愛美:じゃあ、行ってきまーす!

まろ:はやく帰ってこい。……はっ、吾輩としたことが!いや、ゆっくりでいい。うっ、なるべく早く……。ぬぁぁ!

愛美:まろがすごく鳴いてる。最近、朝練もあるし、夕方も練習で遅く帰ってきてるから、寂しいのかな……。ごめんね。大会が終わるまではガマンして……。

まろ:ママ殿ー!!

愛美:あ、ママに甘えてる。やっぱり寂しいんだ。なるべく早く帰るからね!

【間】

ー吹奏楽、地区大会終了

ー愛美帰宅

愛美:ただいま……。

まろ:なんじゃ。元気がないのぅ。

愛美:まろ……。迎えに来てくれたの。ありがとう。

まろ:今日は「大事な日」と聞いていたからの。結果はどうだったのじゃ。

愛美:あのね、 銅賞だったの。

まろ:ほぅ、それはよかったではにゃいのか?

愛美:出場した学校、みんな賞をもらえるの。だから、銅賞は9校。

まろ:ふむ……。

愛美:悔しい。今年でわたし最後なのに!あんなに頑張って……。かおるちゃんとも居残って練習してたのに……。

まろ:愛美はクラリネット、かおる殿はフルートだったかのぅ。

愛美:秋には引退するの……。部長も引き継ぎしなきゃ。

まろ:まさか、愛美がまとめ役になるとはのぅ。

愛美:私のせいだ……。私がみんなをうまくまとめられなかったんだ……。悔しい!悔しいよぉ。みんなになんて謝ったらいいの……。うう……(泣く)

まろ:泣いておるのか?

―まろ、愛美の涙をペロ

愛美:まろ……

まろ:謝る必要があるのか?精いっぱいやっての結果であろう。吾輩はずっと見ておったぞ。毎朝早く行って、遅く帰ってきて、休みの日も練習に行って。愛美ひとりの責任ではない。みんなで心を合わせて頑張ったのであろう。悔しいかもしれんが、吾輩は愛美のことを誇りに思うぞ。

ーまろ、愛美の膝に乗る

愛美:まろ……っ!うう……、うわああああああん!

まろ:頑張ったから悔しいんじゃ。頑張ったから悲しいんじゃ。

愛美:うわぁぁぁぁぁぁぁん!悔しいよぉぉぉぉおーー!

まろ:びっくりして、ママ殿が来たぞ。ママ殿に交代じゃ。

愛美:ママぁぁぁ!うわぁぁぁぁぁぁぁん!

―愛美、母親に抱きついて泣く。

まろ:思いっきり泣くとよい。

【間】

ー愛美、高校一年生。16歳。

ーまろ、8歳

まろ:今日から高校生か。毎度思うが、人の子の成長はゆっくりじゃのぅ。

愛美:まろ、今日から私「さくら高校」に行くの。それで「ペット・アニマルコース」に入って勉強するんだ。将来、動物と関わる仕事をしたいから。

まろ:そうか。それはよきことじゃ。

愛美:まろも8歳過ぎたから、そろそろシニアだね。

まろ:ふむ。だが、吾輩はまだまだ元気。

愛美:そういうことも含めて、上手なつきあい方を学ぶんだ!

まろ:いまさらな気もするがのぅ。

愛美:あれ、なぁにその顔。なんか疑ってない?

まろ:バレた。

愛美:猫ってさ、誤解されやすい動物なんだよね。「表情がない」とか「素っ気ない」とか、「犬の方がわかりやすくてかわいい」とかさぁ。

でも、こんなに表情も愛情も豊かで、一緒にいて「最っ高のパートナー」だって、みんなにもちゃんと伝えたくて。そのためには、きちんとした知識が必要でしょ?

だから、わたし「愛玩動物飼養管理士(あいがんどうぶつしようかんりし)」っていう資格を取るんだ!

まろ:ほう?それはどんな資格なのじゃ?

愛美:うんとね、ペットショップで働く人や動物病院で働く人が取得してる資格。準2級は高校生がとれるんだって。頑張って1級まで取るんだから!

まろ:にゃるほど?

愛美:だいたい「猫派」「犬派」なんてわけるのが嫌なのよね。わたしは、動物みーんな好き。

まろ:うむ。動物の形をしたどの神も、人の子の成長を手助けしておるからにょ。

愛美:でしょ?

まろ:うむ。

愛美:え……?あれ?まろの声が聞こえたような……。

まろ:そうか……。成長したのぅ、愛美。あ、そうじゃそうじゃ。

愛美:あれ、まろ?寝るの?わたし、学校行っちゃうよ。

まろ:ほいほいほいっと。ほれ。

愛美:あ、桜の花……

まろ:頑張るのだぞ、愛美。

愛美:ありがと……。うん、「桜の約束」忘れてないよ。まろ、大好き。

まろ:にゃ~お。

愛美:うふふふ。

【間】

ー愛美、20歳。

ーまろ、12歳。

まろ:愛美。起きるのだ。今日は行かないのか?

愛美:まろ……。うう、起きたいんだけど、胸の上に乗られると起きられない……。

まろ:それは失礼。

ー降りる。

愛美:ふう。おはよ、まろ。今日は学校休みだよ。

ースリスリ

愛美:まろ先輩!

まろ:なんじゃ、急に。

愛美:「さくら動物専門学校」2年生になりました。就職活動もはじまっております!

まろ:そうか。決めておるのか?

愛美:うーん、ちょっと迷ってるんだよねぇ。

まろ:話してみよ。

愛美:この2年、すっごく忙しかった。動物たちの扱いも勉強も難しかったし、悲しい別れもたくさんあった。いっぱい笑っていっぱい泣いた。楽しいことばっかりじゃなかった。

まろ:そうであろうのぅ。

愛美:その中で、一体わたしに何ができるんだろう?って、ずーっと考えてるの。動物園、水族館、観光施設、動物病院、動物販売……。なんかピンと来なくてね~。

まろ:憧れや夢だったものが、知識が増えるごとに現実的になってくるからの。

愛美:う~ん……

まろ:う~ん……

愛美:アハハ!まろまで悩んじゃった?

まろ:は!吾輩としたことが……。

愛美:他には、猫カフェ、ペットシッター、ペットフードメーカー、ペット用品メーカー、動物介在活動、動物愛護推進員……。

まろ:ほぉ、そんなにあるものにゃのか。

愛美:ペットフードメーカーがちょっと気になるかなぁ。

まろ:その心は?

愛美:猫は他の動物に比べて「腎不全」(じんふぜん)で死ぬ割合がすごく高いの。いままで原因は謎で「老化現象」ってことだったんだけど、その謎が最近解明されてきているんだよね。ペットフードもそういうのに適したものもでてきてるし。

ー愛美、まろを抱っこする

愛美:よいしょ。まろにも、もっと長生きしてほしいし。

まろ:……。

愛美:で、ペットフードメーカーで働きつつ、ボランティア活動をしようかと思って。まろとの出会いは、譲渡会だったでしょ?あそこで働いている人たちのこと。

まろ:にゃるほど……。

愛美:地域猫を保護したり、子猫の里親を探したり、譲渡しても大丈夫か信頼できる人を見極めて、ちゃんと最後までみるって契約して、譲渡後も、時々様子を伺って、困ったことがないかとか相談に乗りたいの。他の動物たちも同じだけど、飼育放棄なんて絶対許さない!

悲しい思いをしてる子がいたら飛んで行って助けて「人間は信頼できるんだよ、安心していいよ」って伝えたいの。

まろ:そうか……。

愛美:まろ……?どうかした?

まろ:立派になったにょ……。

ースリスリ

愛美:いいと思う?

まろ:ああ、愛美の好きなようにするといい。

愛美:ありがと。これも、ぜーんぶ、まろのおかげだよ。まろと出会って、私の世界は変わったの。本当にありがとう。

まろ:なんの。礼には及ばん。吾輩はそのために来たのだからにょ。

愛美:これから現実を突きつけられて、もっと辛いことや、悲しい場面に遭遇するかもしれない。それでも、逃げないよ。だって、まろと約束したから。

ーほぼ同時に

まろ:桜の約束だにゃ。

愛美:桜の約束したもん。

愛美:ふふふ……。きっと、知らない人がみたら、一人で喋ってて変な人って見られるよね。でも、不思議。まろと普通に会話ができてる気がするの。私の勘違いかな?

まろ:いいや、勘違いではにゃい。「心が通じ合う」とはこういうことじゃ。

愛美:よし!まろにも賛成してもらったし、就活頑張るぞ!

【間】

ー愛美、ペットフード商品開発部門。25歳。

ーまろ、17歳。


愛美:まろ……。

まろ:ん?ああ、愛美か。帰っておったのか。迎えに行けずにすまんにょ……。

愛美:最近寝てばかりになったね……。ご飯は食べてるけど……。

まろ:若い頃のような気力はさすがにな……。

愛美:まだ大丈夫だよね?

まろ:……。

愛美:まろ?

まろ:なんともいえん……。

愛美:いまさ、シニア向けの新しいフードを開発してるんだ。それができたら、まろもー

まろ:間に合うかわからぬ……。

愛美:もうちょっと!もうちょっとだから、ね?

まろ:吾輩のことはかまわなくてもよい。心配せずに、愛美は仕事に精を出せ。

愛美:わたしがいない時に逝っちゃったらダメなんだから……。

ー愛美、まろを撫でる。

まろ:大丈夫じゃ……、早く仕事にいけ……(ぺろ)

愛美:うん……。行ってくる……。

―愛美、出勤。

まろ:……そろそろか、にょ……。

【間】

愛美:まろ!まろ!

まろ:……どうした?にゃぜ泣いている。にゃぜそんな悲しい顔をしておる。愛美と一緒にいてやれる時間は決まっておる。また姿を変えて、他の人の子を選び、育ててやることになっておるのじゃ。

愛美:嫌!死んだらダメ!許さないんだから!

まろ:吾輩は、愛美のことを忘れたりはせん。お主は、本当によい人間になった。もうじゅうぶんじゃ。

愛美:まろ……?

ーまろを抱き上げる。

ー桜の花びらが、落ちる。

愛美:桜……

まろ:桜の約束、見事に果たしてくれた……。愛美、元気に暮らせ。幸せに……にゃ……。

愛美:まろ?嘘でしょ……?寝たふりしてるんだよね?ねぇ……?目を開けてよ……。まろってば……。うう……。まろ……、大好きだよ……。まろ?聞いてる?ずっと見守ってくれて……、あり……がと……。

【間】

まろ(M):吾輩が虹の橋を渡った後、しばらく愛美の様子を見ていたが、一向に泣きやまん。これでは次の人の子を選ぼうにも、愛美が仕事まで休んで、布団にうずくまったままでは吾輩の立つ背がにゃい。

う~む……、仕方がない。もう一度、お主のところに参ろう。だが同じ姿では行けないにょだ。そこはあきらめよ。今度はどうするかのぅ。

ああ、そうじゃ。

【間】

ー愛美の部屋の窓をカリカリする音

愛美:……え?

ーカリカリ

愛美:ここ2階だけど……。

ーカリカリカリカリ

愛美:あのシルエット……、猫?

ー慌てて布団から出て、窓を開ける。

愛美:っ!まろ?!

まろ:……おかしい。別の姿になったはずじゃが………。あー、ちょっと失礼。

愛美:入ってきた。噓……。

まろ:鏡、鏡、と。あ!目の上の模様を変えるのを忘れていたにゃ!

愛美:まろ!まろ!!帰ってきてくれたの?

まろ:わ、吾輩はぁ、まろではぁ、にゃい。

愛美:あれ、耳。

まろ:ああ、これか。先にボランティアのところにいったのじゃ。そして、あの、世にも恐ろし~い場所に行き、屈辱的ではあったが……。愛美の手間が省けたであろう?

愛美:さくら耳……。

まろ:そういうらしいの。人の都合できれいな名前をつけおって、まったく。それと、ほれ。

愛美:桜の花びら……

まろ:今日は「さくら猫の日」というらしい。だからー

愛美:まろーー!帰ってきてくれてありがとう!

まろ:いたたたっ!こらぁ、愛美は「愛玩(あいがん)なんちゃらかんちゃら管理士」ではないのか?

愛美:また一緒に暮らそう!ううん、そばにいて!

まろ:うむ。よろしく頼むぞ。

ん……?違う!また、吾輩が世話してやるからにゃ!

愛美:名前!名前どうしよう……。2代目だから「こまろ」?

まろ:吾輩をあがめるのだぞ。これは、決して破ってはならにゃい、猫と人の子の契約にゃん。わかったら、いつまでも抱きついておらんで、はやく供え物を出すにょだ!

愛美:そうだ!「こまる」!「こまる」にする。

まろ:こまる?

愛美:居なくなったらー

まろ:「困る」から?

愛美:こまるー!!

まろ:こ、こらぁ、吾輩の体で涙をふくでない!

【間】

まろ:吾輩は猫、猫神である。名前は「こまろ」。

いや、「こまる」である。

Fin.