【登場人物】
■シンデレラ:前回、双子の王子に振り回され、逃げるように山奥の田舎町に引っ越してきた。ナレーション兼ねる。
■魔女(二人):白雪姫を殺そうと企み、オーロラ姫を眠らせた魔女と、フィリップ王子の祖母。※年寄りのような話し方でなくてよい。兼ね役。
■フィリップ:オーロラ姫を助けに行く途中で、シンデレラと出会う。昆虫オタクマザコンポンコツ王子。出会いの時は容姿端麗な王子。オタク時は早口で、テンション高い。
※約30分
※ミュート禁止。アドリブOK。
【豆知識】
シンデレラ:19歳
白雪姫:14歳
オーロラ姫:16歳
フィリップ王子:20歳~23歳
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(N):ようやく意地悪な継母と姉たち、そして、しつこい双子の王子から解放され、山奥の田舎で静かな生活を送るシンデレラ。自然や動物たちとの触れ合いで、ストレスや疲労からズタボロになったメンタルも快復してきました。そんなある日のことー。
【ノック音】
シンデレラ:え、こんなところに訪問客?……はい。
おばあさん(魔女・妹):ああ、お嬢さん。こんにちは。
シンデレラ:こんにちは。どうされました?
ーシンデレラ、窓からのぞく
おばあさん(魔女・妹):よい品物がありますが、お買いになりませんか。上等で、きれいな品を持ってきました。いろいろな色の絹糸であんだ紐もありますよ。
シンデレラ:卸問屋(おろしどんや)さんですか?
おばあさん(魔女・妹):違いますよ。年寄りの小間物売り(こまものうり)です。よかったら、ドアを開けてくれませんかね。
シンデレラ:ごめんなさい。ちょっと事情がありまして―。
おばあさん(魔女・妹):いやいや、ぜひ触って見てもらいたいのです。私が一生懸命編んだものなのです。
シンデレラ:……そうなんですか?じゃあ、ちょっとだけ。
ードアをほんの少し開ける
おばあさん(魔女・妹):いや、もうちょっと開けていただけると……。もっすごい狭い。片目しか見えてない。
シンデレラ:あの……双子の王子のお使いの方……ではないですよね?
おばあさん(魔女・妹):双子の王子?誰のことかわかりませんが、安心してください。わたしは怪しい者ではありませんよ。
シンデレラ:押し売りですか?買取業者ですか?新聞はいりませんし、公共放送は見ていません。
おばあさん(魔女・妹):じゃなくて!違うから!あのね、ちょっとわたしが編んだものを見てほし―
シンデレラ:(被せて)やっぱり結構です!
おばあさん(魔女・妹):ちょっと待ってちょっと待って!話だけでも聞いて!
ーおばあさん、ドアを開けようとする。
【SE ドアガチャガチャ】
おばあさん(魔女・妹):ドアチェーンにU字ロック!ガードが堅い!
シンデレラ:以前、毎日家の中に勝手に入ってこられたり、振り回されたりしたんです。あれは完全にストーカーです!
おばあさん(魔女・妹):そ、それは気の毒に……
シンデレラ:ジー……
おばあさん(魔女・妹):めっちゃ見てくるやん……
シンデレラ:あなたも見るからに怪しい風貌ですわよ。
おばあさん(魔女・妹):し、失礼な。いや、あのね、こう山奥にいらっしゃると、近くにコンビニがあるわけでもないし、買い物とか大変でしょう?
シンデレラ:いいえ、そんなことはないです。畑もありますし、森には、山菜やキノコ、果物もあります。
おばあさん(魔女・妹):自給自足!お若いのに、えらいねぇ。
シンデレラ:欲しがりません。勝つまでは!……ということなので、間に合っています。それでは、ごきげんよう!
おばあさん(魔女・妹):だから、ちょっと待って、ちょっと待ってぇ!ここに来るまでに、七つの山を越えてきたの!もうね、腰と膝、足がブルブルなの!せめてちょっと休ませてぇ!
シンデレラ:……七つの山を歩いて?……やはり只者ではないですね。
おばあさん(魔女・妹):もう倒れそう!酸素!酸素がほしい!
シンデレラ:……わかりました。酸素ボンベを持っていきますね。
おばあさん(魔女・妹):え、持ってるの?
シンデレラ:ええ、わたしも最初、ここに来た時は同じようになりましたから。いま酸素ボンベを持っていきます。ちょっと待ってくださいね。
おばあさん(魔女・妹):もう、とにかく座りたい……。
シンデレラ:はい!お待たせしました!
【SE ドア、バタン!】
おばあさん(魔女・妹):ドアの開閉はやっ!
シンデレラ:椅子はこちらにあります。はい、酸素とお茶です。どうぞ。
おばあさん(魔女・妹):ああ、お茶まで。なんと優しいお嬢さん。(酸素吸う・お茶飲む)はぁ~、生き返るわぁ……。
シンデレラ:ジー……
おばあさん(魔女・妹):……あの
シンデレラ:はい。
おばあさん(魔女・妹):お嬢さんは、若くて美しい。こう言っては失礼かもしれんが、お召し物が古びていらっしゃる。大変もったいない。
シンデレラ:いえ、家事をしたり、畑をしたり、森の中に行くにはこれでじゅうぶんなんです。それに舞踏会には、絶対に!二度と!行きませんから!ええ、誓って!
おばあさん(魔女・妹):ほんとになにがあったの……
おばあさん(魔女・妹)(M):しかし、ここまで来て、おめおめと引き下がるわけにはいかない……
おばあさん(魔女・妹):ああ、お嬢さんには、この腰紐がよく似合うことでしょう。さあ、わたしがひとつ結んであげましょう。どれどれ、ちょっと後ろにまわってー、はいはい、失礼しますよ。
(N):おばあさんは、素早くシンデレラの首に紐を巻き付けようとしました。
ーシンデレラにかわされる
おばあさん(魔女・妹):ええっ?急によけないでっ!転ぶっ!っとぉ、セーフ……。
シンデレラ:いま首に巻こうとしませんでした?
おばあさん(魔女・妹):そ、そそそんなことはないですよ。お嬢さんのトラウマによる被害妄想では?
シンデレラ:腰紐は必要ありませんので!
おばあさん(魔女・妹):それなら、これ!特別な毒…独特なオイルを染み込ませてるこの櫛(クシ)!これで髪の毛をブラッシングすると、お嬢さんの美しい髪が、さらにさらに、ウルウルサラサラ~になりますよ。
シンデレラ:それでは、実演販売をしてみてくださいます?
おばあさん(魔女・妹):え?
シンデレラ:そうおっしゃるなら、そのボサボサでガサガサな髪が、その櫛でウルサラになるかどうか見せていただけます?
おばあさん(魔女・妹):毒吐くねぇ……わたしはもういいんですよ。年寄りですからね。どれどれ、わたしが髪をといて差し上げましょう。
ー間合いをとるシンデレラ。二人の攻防。何度か繰り返す。
おばあさん(魔女・妹):全然間合いをつめられない…(ぜぇぜぇ)
シンデレラ:あ、足元気を付けてくださいね。そこ石がでてますから。
ー足をひっかけて転ぶ
【SE グキッ】
おばあさん(魔女・妹):痛っ!腰!腰うった!足ぐねった!
シンデレラ:私の首を絞めようとした罰かもしれませんね。
おばあさん(魔女・妹):いたた……。なに?白雪姫ってこんなに強かった?どうりで狩人が何もできず帰ってきたわけだわ……
シンデレラ:白雪姫?
おばあさん(魔女・妹):え?
シンデレラ:私は、シンデレラです。
おばあさん(魔女・妹):え?白雪姫じゃないの?狩人から、七人の小人の家にいると聞いてきたんだけど?
シンデレラ:人違いなされたようですね。私は、白雪姫ではありません。
おばあさん(魔女・妹):そーーなのーー?(被り物をとる)ああ、本当だよ!この被り物のせいでよく顔が見えてなかったわ!やっちまった……
シンデレラ:白雪さんと面識はありませんが、白雪さんの城から、わざわざ七つの山を越えて、彼女を殺しに来たのですか?なんて人!
おばあさん(魔女・妹):いやいや。違う。違わないけど、違う。いや、そう、ええ??(混乱)
シンデレラ:とにかく!出る所へ出ますので、そのおつもりで!
おばあさん(魔女・妹):いやいやいや、勘弁して!
おばあさん(魔女・妹)(М):しかしこの娘も、白雪姫と同じランクの美女!くそ、あの鏡ぃぃ。帰ったら締め上げてやるっ!こうなったらこの娘も……。
おばあさん(魔女・妹):あー!あー!そうだそうだ!美しいお嬢さん。わたしはリンゴ畑も営んでいてねぇ。蜜入りのとてもジューシーなリンゴも持ってきているんですよ。お詫びにこれを差し上げますから……
シンデレラ:リンゴ?
おばあさん(魔女・妹):ほぉら、ごらんなさい。どうです、一目見ると誰でも食べたくなると巷では噂の毒リン…いや「ドクターリンゴ」という品種ですよ。
シンデレラ:聞いたことのない品種ですわね。
おばあさん(魔女・妹):「1日1個リンゴを食べれば医者いらず」と言うじゃありませんか。これを食べれば、健康な毎日を過ごせますよ。先ほどのお詫びです。差し上げますから、さぁどうぞ一口。
シンデレラ:(リンゴを投げる)えーいっ!【SE 投げる音】
おばあさん(魔女・妹):ちょっと!なんで投げるの!食べ物を粗末にしたらあかんて!!
シンデレラ:あなたに差し出されたリンゴなんか怪しすぎますよ!
おばあさん(魔女・妹):まったく……。もうひとつありますからね。今度は投げないでくださいよ。はい。
シンデレラ:フンッ!(リンゴを握りつぶす)【SE 握りつぶす音】
おばあさん(魔女・妹):握りつぶしたぁ!そんなかわいい顔して!
シンデレラ:山奥で暮らしていると、自然と握力もつくんでしょうね。
おばあさん(魔女・妹):そうかも!しれない!けど!リンゴを潰せる握力って80キロくらいだから!
シンデレラ:あら、そうなんですか?試しに私と握手してみます?
おばあさん(魔女・妹):いや!いい!こわい!あと、食べ物を粗末にしたらダメ!
シンデレラ:もう何を言っても、無駄ですわよ。
おばあさん(魔女・妹):くそっ お、覚えてー
シンデレラ:(被せて)今度こそ、ごきげんよう♪
ーおばあさん(魔女・妹)退場
シンデレラ:まったく、城に住んでる人って変人ばっかりなの?ほんと嫌になっちゃう。こういう時は、かわいい動物さんたちと触れ合うのが一番ね。
ー森の中へ
【SE 小鳥のさえずり】
シンデレラ:小鳥さん、リスさん、うさぎさんもこんにちは。あら、あれは「バンビ」じゃないかしら?きゃあぁぁぁああ!なんてかわいいの!
シンデレラ:……ハッ!視線を感じる。そこにいるのは誰!
フィリップ:あ……。こ、こんにちは。
シンデレラ:その姿、その馬は……
フィリップ:なんと美しいお嬢さんだ。
シンデレラ:絶対、どこかの王子!
フィリップ:なぜわかったのですか?僕は「フィリップ」といいます。美しい声が聞こえてきたものですから、つい。驚かせてしまい申し訳ない。
シンデレラ:いえ……。私はシンデレラと申します。
フィリップ:僕もこの森が大好きでね。時々、散歩に来ているんです。
シンデレラ(M):あら、まともな王子様なのかしら……
フィリップ:あなたの周りに動物たちが集まってきていますね。心優しい証拠だ。
シンデレラ:ありがとう……ございます。
フィリップ:でも、ちょっと気になるなぁ。
シンデレラ:なにがでしょう?
フィリップ:昆虫がいない。
シンデレラ:昆虫?
フィリップ:そうです。あなたの周りに昆虫は集まってきていませんね。
シンデレラ:それは絵的に……
フィリップ:なにを言うんですか!昆虫のように美しい生き物はいない!
シンデレラ:はぁ……
ーこのあたりから、フィリップの様子がオタクになっていく
フィリップ:例えば、えーと、えーと(キョロキョロ)あ、いたぁ!コガネオサムシ!ウヒョ~!!感無量とはまさにこのことナリ~!全身がメタリックな光沢!背中に赤茶色の特徴的なライン!この輝き!思わず見とれてしまうほどの美しさ!世界一美しい虫といっても過言ではない!
遠い東の国には、「ヤマトタマムシ」という美しい虫がいるとか!ああ、いつか行ってみたい。ジャパン!待ってろよ、ジャパン!
シンデレラ:昆虫オタクですわね……
フィリップ:でも諸外国に出かけるには、ママンのお許しがでないと……。というより、ママンが一緒じゃないと心配……
シンデレラ:そして、マザコン。
フィリップ:だがしかし!かの国には、「カブトムシ相撲大会」というのがあるらしい!ぜひそれに参加したい!
シンデレラ:あの……
フィリップ:あと、「ヘラクレスオオカブト」が欲しい!あと、前翅(ぜんし)が青い「ブルーヘラクレス」も手に入れたい!そして、最強のカブトムシに育てるんだっ!
シンデレラ:あの!
フィリップ:ママンに頼めばなんとかしてくれる!僕のママンはなんでも僕の願いを聞いてくれる世界一優しいママンなんだ!
シンデレラ:すみません!
フィリップ:(聞いてない)シンデレラ氏はぁ、カブトムシの基本的な戦法を知っていますか?
シンデレラ:……いえ、カブトムシを見たことがありませんから。
ーオタク度加速
フィリップ:カブトムシの戦いの武器は頭の角(つの)!「てこの原理」で角が長ければ長いほど、角の先端に働く力は大きくなる!
だから長い角を持つ個体、すなわち大型の個体が、基本的に戦闘能力に優れているッ!
角で相手をすくい上げて、投げ飛ばすのが基本的な戦法なんですッ!ドゥフw
シンデレラ:もう行ってもよろしいでしょーか!
フィリップ:だから僕もカブトムシの真似をして、テカテカに光った長い剣を持っているんデス!!ご覧になりますか!
シンデレラ:いえ、けっこうです。
フィリップ:わかりました。では、お見せしましょう!
シンデレラ:けっこうです!
フィリップ:はい!(馬から降りる)
シンデレラ:地面に思いっきり突き刺さっていますわね。それ使えます?
フィリップ:これは自分用デス。
シンデレラ:え?
フィリップ:自分用、保存用、布教用とありますw
シンデレラ:まったくわからないけど、こわい……
フィリップ:あー、シンデレラ氏はぁ、カブトムシの脚はなぜトゲトゲしているかご存じでござるか?
シンデレラ:ですから、カブトムシを見たことがないとー
フィリップ:カブトムシの脚は、胸に3対(つい)6本あって、脚は付け根の方から腿節(たいせつ)、頸節(けいせつ)、ふ節に分かれ、ふ節に爪がついていて、腿節(たいせつ)は脚を動かすのに用い、頸節(けいせつ)の先の棘が木の幹をしっかりととらえて木を登ることができるッ!
シンデレラ:聞き取れませんでしたが……。スゴイデスネ。
フィリップ:それはもうw本で何度も読んでw覚えてしまいましたのでw
シンデレラ:こわい。話題を変えなくては……。あの、話は変わりますけど、ここに来る途中、白雪姫と七人の小人に会いませんでしたか?
フィリップ:え?……ああ、会いましたよ。白雪姫と七人の「大人」に。
シンデレラ:小人ではなく?
フィリップ:はい。
シンデレラ:白雪姫と七人の―?
フィリップ:「サムライ」
シンデレラ:「サムライ」?
フィリップ:そう言っていました。なにやら命を狙われているそうですが、屈強な男たちに囲まれているので大丈夫でしょう。
シンデレラ:聞いた話とかなり違いますわね。……まぁ、それならよかった。それでは私は帰ります。王子様もあらゆる意味でお気を付けてー。
フィリップ:ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇっ!
シンデレラ:な、なんですか!
フィリップ:実は、これからオーロラ姫のところに行かないといけないんですよぉおおおっ!
シンデレラ:はい?
フィリップ:悪い魔女の罠にかかり、城の中でずっと眠ったままなんだそうです。その魔の手から姫を救い出しに行く途中なんです!
シンデレラ:それはそれは。頑張ってくださいね。
フィリップ:いや、だから、ちょっと待ってぇぇぇっ!
シンデレラ:もう!なんですの?
フィリップ:怖い、怖いの!「一人前の男になりなさい」とグランマに言われて出てきたのはいいけど、ものすごく怖いの!いますぐにでも帰りたいの!でも、グランマも怖いの!
シンデレラ:なるほど。おばあさまは常識人のようで安心いたしましたわ。
フィリップ:一生のお願いです!私と共に戦ってはくれませんか?
シンデレラ:なぜ私が?
フィリップ:実は、さきほど老婆とのやり取りを見ていました!
シンデレラ:……見ていたんですか。
フィリップ:あなたは美しい上に強い!正義感あふれる行動。僕は心打たれました!むしろ、あなたを城に連れて帰って、オーロラ姫のふりをしてもらってもかまわない!
シンデレラ:いやー!私はシンデレラです!お城には二度と行きたくありません!!
フィリップ:魔女によって眠らされたままのオーロラ姫をかわいそうだとは思わないのですか?
シンデレラ:……う。それを言われると……。
フィリップ:ね?ね?かわいそうでしょ?助けてあげたいでしょ?
シンデレラ:確かに、かわいそうですわね……。
フィリップ:でしょ!でしょ!
シンデレラ:「昆虫オタク・マザコン・ポンコツ王子」がひとりで行ったところで、負けは目に見えていますわね。
フィリップ:です!です!
シンデレラ:少しは否定なさってはいかが?(ため息)……わかりました。とりあえず、一緒に様子を見に行くことにしましょう。言っておきますが、私は何もできませんよ?
フィリップ:シンデレラ氏~~!ありがたき幸せナリ!
シンデレラ:ひとりで、どれだけこじらせてるのかしら……
(N):こうして、シンデレラとフィリップ王子は、オーロラ姫の眠る城へ行くことになりました。
ー城に到着
【禍々しいBGM】
シンデレラ:これは……。いかにも魔女がいそうな禍々しいオーラがでていますわね……。
フィリップ:いやぁぁぁぁああ!こんなの無理ゲーでござるよ!
シンデレラ:ちょっと!わたしの後ろに隠れないでください。ほら、王子様行ってください!(押し出す)
フィリップ:ムリムリムリムリムリムリムリッ!
シンデレラ:あっ!何か出てきましたわ!あれは!
フィリップ:え……?え、あれは……ドラ、ゴン……?ドラゴン!ウヒョー!キターーーー!
【SE ドラゴン鳴き声】
フィリップ:あーーー!火を吹いたぁぁぁああ!すごいっ!これはすごいですぞっ!ドラクエでござるぞ!
シンデレラ:何言っているのるかわかりませんが、こ、これは確かに無理ですわ!
フィリップ:まさかここでドラゴンと出会えるとは歓喜ナリ!!我が生涯に一片の悔い無し!!
シンデレラ:もう!しっかりしてください!あのドラゴンを倒さないといけないんでしょう?
フィリップ:そんなかわいそうなことできまぬぞ!ドラゴンですぞ?
シンデレラ:あ~……「ドラゴンがかわいそう」になっちゃった……。でも、オーロラ姫はどうするんですか!
フィリップ:まずは、あのドラゴンを手なずけて……
シンデレラ:手なずけて、どーするんですか!
フィリップ:もちろん、連れて帰るでござるよー!!
シンデレラ:嘘でしょー?
フィリップ:それ以外、何があるって言うんですか!
シンデレラ:あ、ひょっとして魔女が化けてるんじゃありません?
フィリップ:動物も、虫も、こちらが敵意を示さなければ攻撃してこない。るーるるるるるるー。さぁ、おいで~。怖くない。
シンデレラ:(ため息)……。ん?ドラゴンが、なにかジェスチャーしはじめましたわよ。
フィリップ:気持ちが通じはじめたぁぁぁ!!
シンデレラ:違うと思いますが。ん~、なにか伝えたいみたいですわね。お腹のあたりを指さしています。
※おばあさんと書いていますが、ドラゴンの姿をしています。
おばあさん(魔女・姉):あー、もうちょっと!!
フィリップ:しゃ、喋ったぁぁぁ!ウヒョー!
おばあさん(魔女・姉):いつまで騒いでおるのじゃ!イライラする!はやく、そのバカみたいに長い剣を抜いて向かってこんかっ!
シンデレラ:もうツッコむのはやめました……。だそうです、ポンコツ王子。さあ行ってきてください。
フィリップ:そなたを傷つけることなんてできないでござるよ!
おばあさん(魔女・姉):お前はヘラクレスだ!最強のカブトムシだ!思い出せ、カブトムシの戦法は?
フィリップ:カブトムシの戦法……?そうか!カブトムシ相撲だ!あれなら殺さずに勝ち負けが決まる!
おばあさん(魔女・姉):ヘラクレスフィリップ!!私を倒したら、友達になってもかまわない!
シンデレラ:ええ~~。
フィリップ:まことでござるか!わっかり申した!フィリップ、行っきまーす!!
【SE 長めの抜刀音】
シンデレラ:長い……
フィリップ:うおおおおおおおっっ!!剣をドラゴンのお腹の下に入れてぇ、ひっくりぃぃぃ返すぅぅぅぅーーーー!!せいやぁぁーーっ!!!
おばあさん(魔女・姉):ワー ヤラレター(棒読み)
シンデレラ:なんですか?この猿芝居は……
フィリップ:やった!やりましたぞ!シンデレラ氏ぃぃ!!
シンデレラ:無駄に長い剣が役に立ちましたわね。それでは、はやく、城の中に入ってオーロラ姫を助けてあげてください!
フィリップ:あっ!
シンデレラ:え?ああ、ドラゴンが!おばあさんに!やっぱり魔女でしたのね!
フィリップ:グ、グランマーッ!
シンデレラ:ええ~(ドン引き)
おばあさん(魔女・姉):いったぁ。いたたた……。腰、腰打った……。
フィリップ:グランマ!お怪我はございませんか!
おばあさん(魔女・姉):よくやった我が孫よ。ババはうれしいぞ。
シンデレラ:あのぉ、すみませんが、状況説明を……
おばあさん(魔女・姉):孫があまりにも、あまりにも、あーまーりーにも情けなくて、一芝居打ったのじゃ。
我が妹は、白雪姫のところに行く前にオーロラ姫に出会い、彼女の美しさに嫉妬し、やらかしてしまった。あの子は昔から嫉妬深くてのう。
すると今度は、あなたに出会ったそうで、白雪姫にも手を出せなかった上に、あなたの鉄壁の防御で何もできず、悔しくて私に泣きついてきよったわ。
すると今度は、あなたに出会ったそうで、白雪姫にも手を出せなかった上に、あなたの鉄壁の防御で何もできず、悔しくて私に泣きついてきよったわ。
シンデレラ:あれは妹さんでしたか……。やはり魔女だったのですね。
おばあさん(魔女・姉):まったく、孫も、妹も情けない……。とんだ迷惑をかけて、申し訳ない。
シンデレラ:はい。……あ、いえ。
おばあさん(魔女・姉):さぁフィリップ!オーロラ姫のところに行き、口づけをしてくるのじゃ。そうすれば目が覚める!……はず。
シンデレラ:……はず。
おばあさん(魔女・姉):こんなのがオーロラ姫に口づけをして目を覚ますかどうか、正直ギャンブル……。
フィリップ:(ひとりで興奮)す、すすすすごいっ!!魔女でドラゴンになれるとか!!ウルトラレアすぎる!!!
おばあさん(魔女・姉):こら!しっかりせんかい!(ゲンコツ)
フィリップ:ッ!……いたいでござるよぉ……
おばあさん(魔女・姉):さぁオーロラ姫のところに行き、口づけをして起こすのじゃ。
フィリップ:ハッ!く、口づけとは、口づけとは、チッス……!キ、キ、キッスのことですよね……!!はじめて、はじめてのキーッス!!男フィリップ!行ってきまーすッ!
シンデレラ:よかったぁ。私、シンデレラで……。
おばあさん(魔女・姉):やっと行ったか……。すまんかったの。妹にはお灸をすえておいた。しかし、今度は、鏡の国に行ってアリスに会ってくるとか言っていたが……。妹は、鏡が好きじゃからのぅ。
シンデレラ:全然懲りてないじゃないですか。
おばあさん(魔女・姉):あとは、これでフィリップが一人前の王子になってくれればいいのじゃが。
シンデレラ:モヤモヤが残りますが、そうですわね。
おばあさん(魔女・姉):あとはオーロラ姫次第じゃな。ここまで来たら祈るしかない。
(N):こうして、奇跡的に、フィリップ王子の口づけで目を覚ましたオーロラ姫。
(N):容姿端麗なフィリップ王子がドラゴンを倒して助けてくれたと知り、めでたく結婚……のはず。でしたが、あいにく、オーロラ姫は大の虫嫌い。即婚約を破棄。
(N):こうしてバツイチを回避したオーロラ姫は、シンデレラと白雪姫と親友になり、もうしばらく、楽しいシングルライフを送ることになるのでした。
(N):めでたし、めでたー。
(N):容姿端麗なフィリップ王子がドラゴンを倒して助けてくれたと知り、めでたく結婚……のはず。でしたが、あいにく、オーロラ姫は大の虫嫌い。即婚約を破棄。
(N):こうしてバツイチを回避したオーロラ姫は、シンデレラと白雪姫と親友になり、もうしばらく、楽しいシングルライフを送ることになるのでした。
(N):めでたし、めでたー。
フィリップ:(被せて)グランマー!もう一度、ドラゴンに変身をー!
おばあさん(魔女・姉):やかましい!(ゲンコツ)
フィリップ:あんっ!
フィリップ:あんっ!
(N)やっぱり続く。
Fin.
【続編】シンデレラと二人のプリンセス