カクテルをあなたにⅡ ~ラピスラズリの雫~

 【登場人物】[1:1] 

■冴木♂:バーテンダー。30代。
■瑠璃(ルリ)♀:Barの常連客。

※約30~40分
※会話劇
#オンリーONEシナリオ2022

----【本編】----

―入店のベル
―店内はずっとJAZZが流れている。

ルリ:こんばんは。

冴木:いらっしゃいませ。

ルリ:はぁ……雨、なかなかやまないわね。雨宿りさせてもらっていいですか。

冴木:もちろんです。お好きなところへどうぞ。

―カウンターへ座る

ルリ:ちょっと濡れちゃった。

冴木:タオルお出ししましょうか?

ルリ:大丈夫。持ってる。ありがとう。

冴木:秋雨(あきさめ)ですね。

ルリ:梅雨よりはいい、かな。

冴木:「秋霖(しゅうりん)」とも言うそうですね。

ルリ:「しゅうりん」?

冴木:「秋」と、「あめかんむり」に「林」と書いて「霖(りん)」。
この字ひとつで「長く続く雨」という意味があるそうですよ。

ルリ:へぇ。「長く続く雨」か……。
わたしの名前、その漢字で「りん」に変えようかしら。

冴木:(少し笑う)どうされたんですか?ルリさんも素敵なお名前じゃないですか。

ルリ:……ありがとう。

冴木:何か飲まれますか?

ルリ:オススメあります?

冴木:そうですね……。雨の日にちなんだカクテルはいかがですか?
「レイニーブルー」「ブラック・レイン」「レイン・マン」「パープルレイン」などがございます。綺麗な色ですよ。

ルリ:ん~……。ブルーか……。

冴木:あとは、スッキリ系の「スプモーニ」でもよろしいかと。赤色で元気のでる色です。

ルリ:じゃ、それをお願いします。

冴木:かしこまりました。

―カクテルを作りはじめる

ルリ:(ため息)

冴木:今日は、ため息が多めですね。

ルリ:9月になっちゃったなぁって。

冴木:そうですね。

ルリ:ふぅ。

冴木:……もしかして、お誕生月ですか?

ルリ:あら、わたし、そんなこと言った?

冴木:今日つけていらっしゃるピアスの石。「ラピスラズリ」ですよね。

ルリ:わかる?

冴木:はい。9月の誕生石です。そして、お名前も「瑠璃」さん。

ルリ:そう、9月生まれ。どう?このピアス。

冴木:ラピスラズリの雫モチーフですね。深い夜空の色で素敵です。

ルリ:ありがとう。母にもらったもの。
いつもはあまりつけないんだけど、大事な時につけてるの。

冴木:……ということは、今日が誕生日でいらっしゃるとか?

ルリ:あ……。(うっかり言っちゃったという感じ)

冴木:いつも来られる曜日と違うな、とも思いましたし。

ルリ:やだ。わたしって、わかりやす過ぎるわね。

冴木:お誕生日おめでとうございます。

ルリ:ありがとう……。スカートの色もほら。

冴木:きれいなブルーですね。

ルリ:一応、自分へのプレゼント。

冴木:よくお似合いです。

ルリ:ありがとう。

……ふぅ。

冴木:複雑ですか?

ルリ:う~ん、正直ね。
でも、だいぶ「受けとめる?」っていうようにはなってきたけど、数年前まではホントに誕生日のことに触れられるのが嫌だった。

子どもの頃は誕生日がくると、親兄弟に「今日は何の日だ?」なんて無邪気に聞いてたのにね。いつからか言わなくなったな。

冴木:女性は特にそうかもしれませんね。

ルリ:二十歳(ハタチ)の時にバイトしてたら、先輩に「いま何歳?」って聞かれてね。
「ハタチです」って答えたら、「まだ言える歳か……」ってつぶやかれて。
その時は意味がわからなかったけど、いまはわかる。

冴木:年齢を聞くというのは、日本人にありがちのようですからね。

ルリ:いまなら「女性に歳を聞くのは失礼ですよ」って答えるけど。

あと、20代、30代、40代では扱われ方が違ったりするのよね。

冴木:ああ、そうかもしれませんね。

ルリ:何歳になっても「女性」として扱ってほしいわ。
もちろん、こちらも気をつけなくてはいけないけど。

この前ね。近所の小学校の前を歩いていたら、低学年の男の子に
指さされて「あのおばちゃん、知ってる!」って言われて、固まったわよ。

いや、おばちゃんって……。
確かにわたしも子どもの頃は、20代後半になると「おじちゃん、おばちゃん」って思ってたけど、はっきり言われるとショック。

冴木:子どもは正直ですからね。

ルリ:ちょっと冴木さん?

冴木:あ、そういう意味では……(汗)大変失礼いたしました。

ルリ:いいわよ(笑)
だから、「アラサー」「アラフォー」「アラフィフ」なんて言葉ができたんでしょうね。

冴木:年齢をぼんやり指す言い方として、すっかり重宝されるようになりましたね。

ルリ:でも男性は使わないでしょ?

冴木:そう……、ですね。

ルリ:いまじゃお祝いしてくれるのは、会員登録しているお店ばっかり。
しかも、クーポン付きのDMやメールでね(笑)

まぁ「レベルがあがったー!」って思うようにしてる……つもり。

冴木:その通りだと思いますよ。いつも今が一番よいかと。

ルリ:冴木さん自身もそう思う?

冴木:そうですねぇ。「まだまだ」だとは感じていますが。

ルリ:そうね。30代男性は「まだまだ」かもね?

冴木:(笑)それは、まいりましたね。
どうぞ、「スプモーニ」です。

ルリ:ありがとう。

(飲む)ああ、おいしい。爽やかね。

冴木:ありがとうございます。

ルリ:……。この数年でね、周りの環境もがらりと変わったの。
遠方に住む一人暮らしの伯父や伯母を面倒をみて、見送ったり、自分も入院したり、退院したら父親が寝たきりになっていて、そのまま10日後に自宅で亡くなって。
自宅看取りだったの。本人の希望で。
9月だった……。
目の前でドンドン命が細くなっていって、息を引き取ったのを見る感覚……。
兄弟同士のトラブルがあったり、人間関係のトラブルがあったり……。

いろんなことがありすぎて、自分を見失いそうになる。
何とかこれ以上、落ちないように自分なりにしてきたけど、なかなかうまくいかないものね。

冴木:そうでしたか。お辛かったですね……。

瑠璃:あ、ごめんなさい。変な話して。
えっと……
あ、ねぇ、この店の名前も「Lapis lazuli(ラピスラズリ)」よね。
どうして?

冴木:ラピスラズリは、9月と12月の誕生石ですが、わたしが12月生まれで、ここを開店したのが9月なんです。
ラピスラズリの夜空のような濃紺。
吸い込まれそうな色味が好きなのと、「ラピスラズリ」という語感が好きでして。

ルリ:確かに。
わたしがはじめて聞いたのは、映画だったかな。アニメの―

冴木:もしかしてジブリの―

冴木・ルリ:「耳をすませば」

―二人、笑う。

ルリ:あれは素敵な絵だったわ……。

冴木:はい。
わたしの友人の猫の名前は「バロン」ですよ。

ルリ:そのコは、きっと紳士な猫さんなのね。

(思い出すように)ああ、いつだったかしら……。
この店に気がついて、しばらく名前と雰囲気が気になっててね。
ほら、BARに女一人で入るのって勇気いるから。

でも、思い切って入って正解だった。
まるで、お目当ての「宝石・鉱物(いし)」を探し当てた感じ?

冴木:本当に小さな店ですからね。
見つけてくださってありがとうございます。

ルリ:どういたしまして。ふふ……。

冴木:あ、あちらのお客様のオーダーを聞いてまいりますね。少し失礼します。

ルリ:ええ。

冴木:雨音を聞きながら、飲むのも乙(おつ)かと。

ルリ:そうね。

―冴木、他のお客の方へ
―店内にJAZZは流れている
―外の雨の様子を見ながら、カクテルを飲むルリ

ルリ:雨がネオンと混じりあって、いろんな色に変わって落ちてくる。
綺麗……。
やまない雨はない、なんて言うけど…… (ため息)
2度あることは3度あるって感じ。

―しばらく、雨を見ながらカクテルを飲むルリ

冴木:失礼いたしました。いかがですか?スプモーニ。
グレープフルーツとトニックは「黄金の組み合わせ」で、ベースのお酒がいろいろ変わってもおいしいです。

ルリ:いいわね。「黄金の組み合わせ」

ねぇ、「この人とこの人の組み合わせなら間違いない!」って。
そんなこと……あるかしら。

冴木:さて、どうでしょう。人間は複雑ですから。

ルリ:そう、よね。

あ~あ、「わたし、今日は誕生日なの!」って堂々と言える子が羨ましいわ。
いや、ん……、羨ましいのかな。よくわからない……。

冴木:ここも、たまに貸し切りで誕生パーティーをされるお客様いらっしゃいます。
普段は8人くらいで満席ですが、レイアウトを変えれば15人ほど入れますので。

ルリ:へぇ、それは本人が?それともお友だちがセッティング?

冴木:両方のパターン、ありますよ。

ルリ:そう。
わたしは……、大げさにしたくないな。

冴木:そこは、人それぞれですから。
周りの方々に「感謝」と、「これからもよろしくお願いします」ということで。

ルリ:……。まあ、ね。それはあるわね。
親に、産んで育ててくれてありがとうって感謝。
ずっと支えてくれてありがとうって。
友人にも。

あ、別にやっている人たちを否定してるんじゃないわよ?

冴木:はい。わかっております。
それにしても……、今日、何かありましたか?

ルリ:それが、な~んにもなかったの。
親、親戚には「結婚」「孫」ってつつかれるじゃない。
諦めたのかもう言われなくなったし。
結婚した友人にも「ルリも結婚したらいいのに〜」って言われてたけど、こっちも言われなくなってきた。

友人は、子どもができると会話が「育児」のことか、「旦那さんの愚痴」になりがちなのよね。そうすると、ちょっとした会話のすれ違いや、時間の使い方の違いから、だんだん遊ばなくなって、気がついたら、わたし一人で「BAR」に入るような女になってた。

でも、「ぼっち」って言うと寂しいから、「ソロ活動してます」って。

冴木:それなら、わたしも「ソロ活動」ですね(笑)

ルリ:あら、パートナーいたわよね?

冴木:数ヶ月前に別れまして……。

ルリ:え……?

冴木:お気になさらずに。喧嘩の果てに、というわけではありませんから。
ちゃんと話し合いましたよ。
彼女が進みたい道を歩む上で、この生活スタイルを続けるかどうかー

ルリ:それもなんだか……、寂しいわね。

……あ、ごめんなさい。
二人のことは、二人にしかわからないんだものね。

冴木:わたしもこのような仕事をしていますから、日中働いている彼女とすれ違いが続くんです。
最初の頃は、なんとかなる、と思っていたんですが、やはり難しいものです。

「あなたとの結婚生活が想像できない」と言われてしまいました。
それを言われると、何も言えませんね。

ルリ:そっか……。

冴木:やはり、「3B」は、なかなか難しいですかね。

ルリ:「さんびー?」
なにそれ、鉛筆の芯?

冴木:ご存知ではないですか?

ルリ:ふふ、知ってるわよ。「交際すると苦労する職業」でしょ。
最近「4B」になったらしいわよ。さらに、芯が太く(笑)

冴木:(笑)そうなんですか?

ルリ:「バンドマン、バーテンダー、美容師」に「舞台俳優」

冴木:なるほど。厳しいですね(苦笑)

ルリ:働いている時間や活動時間がね、違うもの。忙しそうだし。
誰かと付き合う暇も、会う時間もないって感じ。
それを理解した上で、お付き合いしないとやっぱり不満がたまっちゃうかもね。

わたしが利用している女性の美容師さん。
彼氏さんと一緒に住んでいて交際期間も長いんだけど、結婚しないのよね。
理由はなんだと思う?

冴木:さて……、なんでしょうか?

ルリ:「彼は派遣で、自分のが収入が多いから」ですって。

冴木:なるほど……。
男の側としても、奥さんの方が収入多いと複雑ですね。

ルリ:う~ん……。同じ職種ならまた違う結果になるのかしら。

冴木:どうでしょう。
以前、同じ職場、同じ職種で働いていた友人同士が交際していたんですが、仕事のことでぶつかることが多くなってしまったらしくて、あいにく……。

ルリ:そっか……。
人と人が友人以上になろうと思うと難しいわね。

冴木:最後まで、仲睦まじい夫婦もいらっしゃいます。素敵ですよね。

ルリ:ホント、微笑ましいわ。
そう思うと、この人と一生を添い遂げたい相手とめぐり逢うなんて「奇跡」よね。
これぞ「黄金の組み合わせ」!!

……な~んて奇跡はなかなかおきませんなぁ。

冴木:(思わず笑う)……っと失礼。

ルリ:あ、ちょっとおじさんっぽかった?

冴木:いえ、「料理」みたいだと思いまして。

でも、完璧な人間はいませんから、「奇跡」と思っても、ずっと一緒にいればいろいろありますよ。
そこをどう二人で乗り越えるか、でしょうね。
二人で乗り越えるたびに、絆が強くなっていくんだと思います。
まぁ、失敗したわたしが言えることではありませんが(苦笑)

ルリ:う~ん。まぁね。いくら仲良くたって、ケンカはするでしょうし?

冴木:はい。そこで許し合えたり、素直に謝れたり、感謝できたりするのも必要かと。

ルリ:そうね。お互い意地はったままだと解決しないもの。
だから、職種はあんまり関係ないわよね。

冴木:そう願いたいです。

ルリ:大人になると、いろいろ考え過ぎて、もう勢いで結婚はできない。
お付き合いするにしても、その先のことを考えちゃうし。

それにしても、どうしてこううまくいかないんだろ……。
高望みしているつもりはないんだけどな。
でも、知らず知らずのうちに壁が高く分厚くなってるのかも。

冴木:ちなみに、ルリさんのお好みの男性像は?

ルリ:前はいろいろ思ってたけど、「優しくって、思いやりがあって、かっこよくて」とかね。いまは……、「尊敬できる人」かしら。

冴木:お互い、尊敬しあえるのはいいですね。

ルリ:そうね。

はぁ……。誰からも愛される人が羨ましい。
わたしは、その人を遠くから見ていることしかできない。

「人は人。わたしは、わたし」って頭ではわかっていても、打ちのめされちゃう。
そんな自分も嫌。

冴木:……前にお話しされていた男性のことですか?

ルリ:え、ちょっと!わたし、そんなこと話した?

冴木:ここに初めて来られた時に、ほろ酔いで涙を浮かべて……。

ルリ:やだ……。覚えてない。それは、ほろ酔いじゃないわ。
うわぁ、何やってんだろわたし。恥ずかしい……。

冴木:その方に気持ちを伝えられたんですか?

ルリ:目の前にいるのに、手が届かない人。

「好きだけど、それ以上の関係を望んでないから」って言っちゃった。
答えを聞きたくない、傷つきたくない。
だから、自分でブレーキかけて、深みにはまらないようにガードしちゃった……。

冴木:今日、その方にお会いになってきたんですか?

ルリ:っ!……もう、冴木さんに隠し事はできないわねぇ。

ええ、そうよ。

冴木:本当は、その方に「おめでとう」って言ってほしかったとか。

ルリ:……付き合っている人いるみたいだし。

「今日は誕生日なの」って言ってみようかと思ったんだけど、言えなかった。
バカ……みたい……。
メイクに時間かけて、髪型がおかしくないかとか、コーディネートとか、アクセサリーとか、靴とか、入念にチェックして……。わたしなりに一番輝いてる姿のつもりで……。

でも、全部、わたし一人で空回り。傷だけついて。

痛い女よね……。
なんの意味もない。

冴木:……ラピスラズリも―

ルリ:……え?

冴木:ナイフで傷をつけられる硬さなので、やや傷がつきやすく、でも、ガラスのような光沢感があって美しい。
それと、「青や空、天」を意味する、アラビア語の「Lazward(ラズワルド)」が組み合わさって作られた混成語だそうです。

それを聞くと、なんだか女性みたいだなと思うんです。
傷つきやすく、美しい。
宇宙のように未知の存在。
それゆえに大事にしなくては、と……。

ルリ:ラピスラズリみたい……?

冴木:ことわざで「瑠璃(ルリ)も玻璃(ハリ)も照てらせば光る」というのはご存知ですか?

ルリ:ええ。意味は忘れちゃったけど。

冴木:「瑠璃」は青い宝玉、または色付きのガラス。
「玻璃」は無色の水晶、またはガラス、いずれも貴重な宝玉。
そのような宝玉は、光が当たれば、光り輝き目立つように、才能のある者はどこにいても目立つ。
また、機会さえ与えれば活躍する、という意味だそうです。

ルリさんにとって、今日は「Rainy Blue」でしょうが、また必ず輝きますよ。

ルリ:そう……かしら……。

冴木:そうですよ。

ああ、バースデーカクテルをお出ししましょうか?

「チョコレートスリング」
カクテル言葉は「好きなものに夢中になれる熱血屋」

ルリ:ふふ……、バースデーカクテルもあるのね。

好きなものに熱中したら忘れられるかしら。

冴木:熱中している間だけは忘れているかもしれませんね。

―BGM曲 ジョン・コルトレーン「After The Rain」が流れはじめる

ルリ:でもふとした時に思い出す……。忘れるのは難しい。

冴木:時間をかけて薄めていく、という感じでしょうか。
そのまま飲むとキツいお酒も、別のものを足して薄めたり、新しいものができたり、飲みやすくなったりします。

ルリ:カクテルって面白いわね。

冴木:はい。

ルリ:……。ねぇ、いまかかっている曲、いいわね。なんていうの?

冴木:「After The Rain」です。
ジョン・コルトレーン。モダンジャズを代表するサックスプレーヤーです。

ルリ:アフター・ザ・レイン……

冴木:カクテルでも「After The Rain(アフターザレイン)」がありますよ。

ルリ:はじめて聞くカクテルね。

冴木:材料に「ラズール」というグレープフルーツリキュールを使用していますが、現在は入手困難となっていまして―。
よろしければ、他のグレープフルーツリキュールを使ったものでお作り致しますよ。

ルリ:……それを飲んだら、雨がやむかしら。

冴木:そうだといいんですが……。

ルリ:じゃ、それ「After The Rain(アフターザレイン)」をお願いします。

冴木:かしこまりました。

―カクテルを作る冴木
―しばらく、BGMを聞いているルリ

冴木:どうぞ。「After The Rain」でございます。

ルリ:ありがとう。
わぁ、淡いブルーね。空の色かしら。きれい。

(一口飲む)うん、爽やか。
雨があがった次の日、晴れ渡った朝?
あ!ラピスラズリが薄まった色とか?

冴木:ラピスラズリの雫、かもしれませんね。

あらためまして、ルリさん。お誕生日おめでとうございます。
ルリさんがこの世に生まれてきたこと自体が「奇跡」なんですよ。

ルリ:……ありがとう。

さすが冴木さん。バーテンダーはモテそうね。

冴木:それはないですよ。客商売ですから。

ルリ:あらら。若い女の子はだまされちゃうわね~。

冴木:聞き捨てならないですね(笑)
でも、この店の中にいる間だけは、いい気分で過ごして頂きたいと思っていますから。

ルリ:素敵ね。
冴木さんと話していたら、スッキリしてきたわ。ありがとう。

冴木:とんでもございません。

ルリ:ふふ。

あ~あ、久しぶりに実家に行ってみようかな。
「じゃーん、今日は何の日だー?」って。

冴木:(笑)はい。

ルリ:なんて言われるかしら。

まぁとにかく、今日は、

わたしに「乾杯」ね。

冴木:はい。


―JAZZでFO


【終演】