古典落語声劇『味噌豆』女将と定吉Ver.

[1:1]または[0:1:1]凛アレンジ

女将:
定吉:店の丁稚。10代半ば。

※通常は、旦那と定吉のやり取り
※語尾変更、アドリブ可
※みそ豆とは、味噌を作る前のおいしく煮えた大豆のこと。
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女将:定や、パンパン(手をたたく)、定はいないかい?

定吉:へ~~い!女将さん、お呼びでございますか?

女将:ああ、いま台所でね、味噌豆を煮てるんだよ。
もう出来あがってる頃だろうから、ちょっと見てきてくれないかい?
いま、アタシ、手がいっぱいなのよ。

定吉:味噌豆でございますか?
わかりました、行って参ります。

―台所に行く

定吉:え~、味噌豆なぁ~。あれ美味しいんだよ。
わぁ~~~、お鍋がコトコトいってる。
ちょっとフタ取って……

―フタを取る

すごい湯気だ。熱いねこりゃ。
煮えてるかどうかってのは、ちょっと食べなきゃわかんないんからな。
じゃあ、この小鉢にちょいとよそって……
えへへ。わぁ。ああ、いいにおい!
ふふっ、味噌豆、大好物。 ちょっと食べてみよう。
あ、あつっ、あつっ。フウ、フウ、フゥ、フゥ、フゥ。

―食べ始める。もぐもぐしながら。

んん、こりゃいいね。んん、美味しいね、こりゃ。んん、美味しいね、こりゃ。
んん、いいね、煮えてますよ、こりゃ。んん、こりゃ、とまんなくなるね。
んふふ。んん、んん、美味しいねぇ!

女将:定吉ったら、ずいぶん遅いわね。何やってんだろ。どれ……。

―台所を見に行く

女将:あ、お前!ちょっと何つまみ食いしてんだい!

定吉:おっ、おはひはんっ(女将さん)!
ああちっ!ハフハフッ!!
ごくん。
す、すいません、ちょっと煮えたかどうか食べてみよ―

女将:ああ、あれかい?
♪あぶくたった にえたった にえたかどうだか たべてみよ むしゃむしゃむしゃ もうにえた(鬼ごっこ遊びの歌)

定吉:やっべ!!!!

―逃げようとする

女将:待ちなさいっ!(ガシッ)
そんなに、アタシと「鬼ごっこ」がしたいのか~い?ええ?

定吉:すみませんっ!

女将:まったく何をやってんのお前は、ええ?
もういいわ、ちょっとおつかいに行ってきなさい。
平河町の―

定吉:「ひらりん」さんですか!

女将:「ひらばやし」さんでしょ!……じゃなくて!
山田さんのところへ行って、品物が届いているかどうか聞いてきておくれ。

定吉:山田さんか……

女将:なにつまんなそうな顔してるんだよ。

定吉:「たいらばやしか、ひらりんか、いちはちじゅうのもーくもく、ひとつとやっつでとっきっき!」

女将:気に入ったんだね……。今日は、山田さんちだよ。

定吉:へ~い。

―定吉、おつかいに行く

女将 :もう、しょうがないわねぇ。
……でも、おいしそうだねぇ。味噌のにおいがプーンとして。
……ちょっとあたしもつまんでみようかね。

―お皿に取る

こんなもんでいいかな。
フウ、フウ、フゥ、フゥ、フゥ、

―食べ始める。もぐもぐしながら

んん、んん、んん、んん、これはなかなか……
んん、んん、いいわねぇこりゃ。
んん、んん。
定吉がとまんなくなるのもわかるよ、んふふっ。んん、んん。
あ……、ここに定吉が帰ってきたら「女将さんも食べてる!」なんてことを言われて、面目がたたないよ。
う~ん。どっか一人で食べられるとこはないかねぇ。
この家の中で、一人でいられるところは……
あ、そうだ! はばかり、はばかり。 お・ト・イ・レ♡
あそこなら、誰も入ってこないでしょ。
ちょっと匂うけど、ま、行きましょ、行きましょ。


―戸を開けてトイレに入り座る

女将:どれ。
フウ、フウ、フゥ、フゥ、フゥ。

―食べ始める

んん、んん、んん、んん、うん!
おいしい!
やっぱり美味しいもんは、どこで食べてもうまいもんだねぇ。

―定吉がおつかいから帰ってくる

定吉:女将さん、ただいま戻って参りましたぁ~!
……女将さ~ん?
あれ? どっか行っちゃったのかなぁ?
ただいま戻りましたぁ~!

……あっ(ニヤリ)
どっか行っちゃったんなら、こりゃありがてぇや。
鬼の居ぬ間になんとやらだ。
んははっ!さっきの味噌豆、もうちょっと食べよう。
食べ足りなかったんだよ、うん。

―お皿にみそ豆を盛る

これくらいでいいかな。
ああ、いいにおい。

―食べ始める

はふっ、はふっ、はふっ、はふっ、
んん、んん、んん、んん、美味しいねこりゃ、んん、んん、んん、んん。

……美味しいけど、今食べてるところに、女将さんが戻ってきたらまずいなぁ……。
鬼の形相で怒るからマジでこわいんだよなぁ。

どっか一人で食べられるところ……
う~ん、う~ん……
うん……?うん!そうだ!
この家の中で一人っきりになれるってぇのは、はばかり、はばかり、お手洗い♪
ちょっと臭いけどな。 あそこで食べよ。 えへへへ~

―トイレに行き、ドアを開ける

定吉:よいしょ。

女将:きゃっ!

定吉:あっ!女将さんっ!

女将:さ、さささ定吉!!何しにきたの!!!

定吉:な、なにって、ええと~~~……。お手洗いに~?

女将:おおおお、おまえっ!いきなり開けるなんてどうかしてるよ。
まず戸を叩きなさいよ!
誰かは入ってるか確認してから開けなさいよ!
「コンコンコン、入ってますか~?」って声をかけなさいよ!!
いきなり開けるって、バッッカじゃないの?
ああ!それともわざと?
アタシのあ~んなものやこ~んなものを見たかったの?
そりゃアタシは魅力的な女だろうけど、おまえには早いんだよ。
高嶺の花子さんなんだよ!
だいたいアタシは人妻だよ?ありえない!信じられない!はい、無理ィ!
無理ゲー!
このエロ定がっ!!!

定吉:くそみそに言うなぁ……

女将:くそみs……ッ?!
場所をわきまえて物を言いなさいよ!
味噌豆がなんだかアヤシイものに見えてくるじゃないのさ!!

定吉:じゃあ、鍵つけといてくださいよ!

女将:鍵ィ?
錠前かい?
ありゃ、蔵につけるもんでしょ。
はばかりン中に入って、外の錠前をどう扱うんだい。
だいたい、そんなもんつけてたら、緊急時に大変じゃないか。
ああ、お腹が!!
か、か、か、鍵!鍵!ってなって、大惨事になるよ?
長屋なんか、露地が袋小路で地域のセキュリティレベルは意外と高いから、家の戸に鍵をかける必要もないんだし。
あ、違うか。
長屋のトイレは共同か。
頭も見えるし、下も若干空いてるしぃ!!
あああああ!
やだやだやだやだ!!

定吉:ちょっと何言ってるかわかんないです。

女将:なんでわかんないのよ!って言うか、何しにきたの!!!

ー言い訳を考え悩む

定吉:あの~~……、
あ、

「おかわり持って参りました」

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【終演】