シンデレラと二人の王子【おとぎ話コメディ】1

シンデレラシリーズ1
1.シンデレラと二人の王子
2.シンデレラと二人の魔女
3.白雪姫とサムライ
4.シンデレラと二人のプリンセス
5.シンデレラの夢(完結)

【登場人物】[0:1:2]
・シンデレラ:二人の王子に振り回される。兼ナレーション
・デレンツ王子(双子):ウルトラめんどくさいツンデレ
・ルナシス王子(双子):スーパーうざいナルシスト

※約30~40分。アドリブOK、ミュート禁止。
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N:今宵はお城で舞踏会。
シンデレラの姉たちは着飾って出ていくものの、
シンデレラにはドレスがありませんでした。
舞踏会に行きたがるシンデレラを、魔法使いのおばあさんが助け、
かぼちゃの馬車に乗り、無事お城に着くことができました。

【舞踏会BGM】

シンデレラ(М):はじめての舞踏会。
ドレスも何もなかった私が、あの魔法のおかげで、
まさかお城に来ることができるなんて夢のよう……
ドキドキするわ。

でも、この姿も12時まで。約束は絶対守らなくっちゃ。

ー城内へはいるシンデレラ

シンデレラ(М):ああ、なんて素敵なの。
なにもかもが眩しいわ。こんなところで素敵な王子様と出会えたら……。
でも、私、ダンスもしたことはないし、どこにいたらいいのか……。

―舞踏会の様子を伺うシンデレラ

美しいお姫様がいっぱい。
せっかく来られたけど、私なんかがここにいても……

ーオロオロしているところ、人にぶつかる。

シンデレラ:あ!!も、申し訳ございません!

デレンツ:なんだお前は、ふらふらと。(ジロジロ)

ほぉ、場慣れしてないようだな。
しかし……(ジロジロ)
ふむ。俺が踊ってやってもいい。断ることなど許されない。

シンデレラ:ええ?

シンデレラ(M)素敵な方だけど、態度が横柄……
この方はいったい……

デレンツ:さぁ、こっちへ来るのだ!

シンデレラ:ちょっ……、ちょっと待ってください!

ー踊るデレンツとシンデレラ

【BGMを大きめにして踊っているような雰囲気に。その後、小さくする】

デレンツ:どうだ、俺と踊れて満足だろう。

シンデレラ:あ、ありがとうございました。

デレンツ:お前の名前を教えろ。

シンデレラ:わたしは「シンデレラ」と申します。

デレンツ:なるほど?
シ、シシシシンデレ…(照れて言えない)
わかった。覚えておこう。
じゃあな、プリンセス!

シンデレラ:あ、あなたは……!

行ってしまわれたわ。

びっくりした。いきなりダンスなんて……
少し強めだったけど、ちゃんとエスコートしてくださった。
ああ、ドキドキがとまらない。
少しどこかで休めないかしら。

―休む場所を探すシンデレラ

ルナシス:おや、お嬢さん、気分でも悪いのかな?

シンデレラ:え?い、いえ、大丈夫です。どうぞお構いなく。
あら?さきほどの方ですか…?

ルナシス:なにを言っているんだい?
いま、美しい僕と、美しい君の「運命の出会い」の瞬間じゃないか!
僕の名前は「ルナシス」
この国で、いや、世界で一番美しい王子だ!

シンデレラ:王子様?!
それは大変ご無礼なことを!
し、失礼いたします!

―腕をつかまれるシンデレラ

ルナシス:おっと、逃がさないよ。君の名前を聞かせてほしいな。

シンデレラ:さきほども申し上げましたが……
「シンデレラ」と申します。

ルナシス:シンデレラ!
ああ、シンデレラ!僕のハートに刻み込んでおこう!

シンデレラ(M):どういうことかしら。
先程の方とお顔はそっくりだけれど、服装も態度も違う……。

ルナシス:僕の名前はもう覚えたね。さぁ言ってごらん?

シンデレラ:ル、ルナシス様

ルナシス:そう!その通りだ!さぁ、踊ろう!

シンデレラ:ええ!またですか?さっきも踊りましたぁぁああっ!!

ー踊るルナシスとシンデレラ

【間】

シンデレラ:(息切れ)ちょっ……、も、申し訳ありません……(咳き込む)
す、少し、休ませていただいてもよろしいでしょうか(息切れ)

ルナシス:なぜだい?僕は君となら一晩中でも踊れるよ。

シンデレラ:(息切れ)お、王子様は舞踏会に慣れていらっしゃると思いますが、
わたしは、はじめてなので。
もう、かれこれ3時間近く踊り続けているのではないかと……

え、3時間…?

いけない!もうすぐ12時だわ!帰らなくちゃ!

ルナシス:どうしたんだい?シンデレラ!

シンデレラ:あの、本日は大変楽しませていただきました!
12時までと約束してありますので、これで失礼いたします!

ルナシス:待って!こんなに美しい僕を置いていくのかい?!

デレンツ:どこに行くんだ!プリンセス!

シンデレラ:え、えええええ?!王子様が二人いる?!
どういうこと?

【SE 鐘の音】

シンデレラ:ああ、ダメ!時間がない!

ー階段を駆け下りる

シンデレラ:あ! 靴が!!

ー探しに来る二人の王子

ルナシス:シンデレラ、キミはなんて足が速いんだ。アスリートなのか?
ドレスを来てこの階段を駆け下りるなんて、素晴らしい。

デレンツ:なぜ俺に挨拶なしに帰ってしまったのだ!!

ん?
この靴は………

ルナシス:(デレンツから靴をとる)っ!!
なんて美しい靴なんだ。
彼女にピッタリだ。

デレンツ:(ルナシスから靴をとる)っ!!
返せ、ルナシス!これは俺のだ!

ルナシス:なんだ?デレンツ。
珍しいな。お前がそんな態度を見せるとは……
そうか。
さては、彼女に惚れたな?

デレンツ:そ、そそそんなことはない!

ルナシス:僕は彼女に決めたよ。
必ず僕のプリンセスとして迎え入れてみせる。

デレンツ:ぐっ……

ルナシス:いいんだよね?

デレンツ:ルナシス……

勝負だ。

ルナシス:そう来なくっちゃ。
よし、どっちが先に彼女を落とすか勝負だ。

デレンツ:ああ。

【間】

N:次の日

シンデレラ:ああ、昨日は本当にびっくりした。
王子様がふたりいらっしゃったなんて。
ご兄弟なのかしら。
それとも、お顔はそっくりだったから、双子とか……?
お二人とも魅力的な王子様だったけど、ちょっと癖がありすぎる。

ガラスの靴の片方を置いてきてしまったけど、
もう会うこともないでしょうから、一夜(ひとよ)の夢だったと思うことにして、
いつも通りお掃除、洗濯に励みましょ。

お義母さまやお姉さまにはつらくあたられるけど、
それなりになんとかこなしているわ。
高望みはだめね。

【間】
【SE 馬の歩く音】
ー家来をつれているデレンツ、シンデレラの家を見つける

デレンツ:ここか……。
お前たちよくやった。
やはり、プリンセスの家を見つけたのは、あいつより俺のが先だったな。

……しかし、なんとも小さな家だな。

―勝手に入ってくる

失礼する!

シンデレラ:え……?あっ!お、王子様。まさか!
こんな辺鄙(へんぴ)なところにいらしてよろしいのですか?

デレンツ:気にするな。

シンデレラ:せめてお忍びで町にいらっしゃるとか……

デレンツ:俺はそんな器の小さい男ではない。

シンデレラ:いえ、そういうことではなく……

デレンツ:なんだ?セキュリティの心配をしているのか。
それならば、俺にはいつでもかけつけてくる「アルソック」がついている。

それに俺は強い。まったく問題ない!!

シンデレラ:アル?ソッ…?そ、そうですか……。
ええと、ところで、王子様は「ルナシス」様でいらっしゃいますか?

デレンツ:あ、あ、あ、あんなナルシスト野郎と一緒にするな!
なぜあいつと双子なのか。まったくもって不愉快だ!

シンデレラ:双子だったのですね。
存じ上げませんで、大変失礼いたしました。

では、あなた様のお名前は……

デレンツ:俺の名前は、国中の者が知っているはずだが、
あえて言おう「デレンツ」と!
そして、あえて言おう、ルナシスは、カスであると!!

シンデレラ:デレンツ様

デレンツ:……っ!!(かわいっ
そ、そ、そういえば、昨晩は、なぜ俺に挨拶もなしに勝手に帰った。

シンデレラ:申し訳ありません。
12時までと約束してあったものですから。

デレンツ:ふむ。約束を守るタイプか……
嫌いじゃない。

シンデレラ:はぁ。ありがとうございます。

デレンツ:ああ、そうだ。
あ~……、これは、その~、お前の靴か。

シンデレラ:あ!そうです。昨日片方を落としてしまって。
もしや、わざわざ届けにきてくださったのですか?
ありがとうございます!

デレンツ:ま、まぁ?気にするな。
そ、そうだな……、な、なかなかいいセンスをしているな。
ドレスもヘアスタイルも……

いや、俺の方がセンスがいいがな!

シンデレラ:おそれいります。
ですが、あの時はなんといいますか、たまたま、その……

デレンツ:言い訳は必要ない。俺は細かいことは気にしない。

シンデレラ:あ、あの…、失礼かと思いますが、お茶でもいかがでしょうか。
靴をわざわざ持ってきてくださったお礼と言いますか……
私、さきほど焼き菓子を作りましたので。

デレンツ:て、手作りスイーツか……。

いただこう。

シンデレラ:お口に合わないと思いますが、こちらでございます。

デレンツ:ふむ(食べる)

こ、これは……

シンデレラ:やはり、お口に合いませんでしたか?
申し訳ありません!

デレンツ:い、いや、うまい(ぼそ)

シンデレラ:え?

デレンツ:「美味い」と言っているのだ!何度も言わせるな!

シンデレラ:申し訳ございません。あ、ありがとうございます!

デレンツ:あ、ああ~、その~、ええと……
そうだ!!
僕の馬でも見るか?

シンデレラ:え?

デレンツ:さあ、こっちだ

―ぐいっとシンデレラを外へ連れていく

シンデレラ:あ!(引っ張られる)

デレンツ:見たまえ。これが俺の馬だ。

シンデレラ:黒い馬……
毛並みがつやつやして、とてもりりしいですわ。
王子様にぴったりな素晴らしい馬です!

デレンツ:りりしい…?りり……
あ、ああ……
そ、そんなことはない、ことはない、ことはない。いやある!!
(ぼそぼそ言うものの、言い切る)

シンデレラ:とても素晴らしいです。この馬の名前はなんですか?

デレンツ:「デレンツ・アクヤク・ネクロマンサー・リーゼロッテ」だ。

シンデレラ:え?アクヤク?ネクロマンサー?…え?

デレンツ:とにかく!
今日は、その靴を返しに来ただけだ。
「落とし物は交番に」とも思ったが、気にしているだろうと思ってな。

べ、別にお前に会いに来たわけではないぞ!
勘違いするなよ!!!

シンデレラ:はぁ…。ありがとうございます。

デレンツ:まぁ、その、なんだ。今日のところは失礼する。
その焼き菓子をまた食べにきてやる。
しっかり作っておくんだな!

シンデレラ:わ、わかりました。

ーデレンツ退場

シンデレラ:びっくりした。まさか、王子様がいらっしゃるなんて……

ルナシス:やぁ、シンデレラ!

シンデレラ:え、ルナシス様?どうされたんですか?
さきほど、デレンツ様がいらしてちょうど帰られたところですが。

ルナシス:もちろん知っているよ。あいつの後をついてきたんだ。
ほら、あの馬で。美しい僕の馬だよ。見てごらん。

シンデレラ:ああ、白馬!なんて美しいんでしょう!

ルナシス:そうだろう!そうだろう!
そう僕にしか、そう、この「僕にしか」似合わない美しすぎる愛馬だ。

いや、僕の方が美しいか!ハハハハハ!!!

名前は、「ルナシス・ホワイトタイガー・ローズマリー」さっ!

シンデレラ:聞いてないのに……。
なんだか、いろいろ混ざったお名前ですのね。
競馬、あ、いえ。

でも、まさに白馬の王子様です。

ルナシス:その通り!僕は!あの!あの!白馬の王子だ!!!
どうだ、美しいだろう!!

シンデレラ:は、はい。

ルナシス:さて、中に入って、ちょっと鏡をみてもいいかい?
馬に乗るのは気持ちがいいが、ヘアスタイルが乱れるのはたまにキズだ。

シンデレラ:え、ちょっ…!!

ルナシス:なんだい、ここは。クローゼットかな?

シンデレラ:リビングルームです!

ルナシス:鏡はきれいに磨いてあるね。
僕の顔がさらに輝いてみえるよ。

シンデレラ:ありがとうございます。
って喜んでいいのか、わからない!

ルナシス:うーん、やはり、今日の僕も一段と美しい。
鏡が嫉妬しているよ。

シンデレラ:どういうこと……?

ルナシス:もちろん、君もだよ。シンデレラ。

シンデレラ:(引き気味)ありがとうございます

ルナシス:おや?これは?

シンデレラ:あ、それは私が作りました、焼き菓子です。

ルナシス:なるほど?
ふむ(食べる)
これは……、最高だ!
僕への愛がつまった味がする!

シンデレラ:そうですか?

ルナシス:これはすべて僕へのプレゼントだね。
喜んでいただくよ。

シンデレラ:気に入っていただけたのでしたら、はい。

ルナシス:さて、君の家もわかったし、今日はこれで失礼するよ。シンデレラ。

シンデレラ:いえ、あの、ご無理なさらずとも大丈夫ですので。

ルナシス:君は照れ屋なんだね。かわいいな。
でも、恥ずかしがることなんてひとつもない。
なぜなら!僕が美しいからさ!!!

シンデレラ:よくわかりませんが……

ルナシス:それでは、美しいシンデレラ!
また明日も来るからね。
この眩しすぎる僕がっ!!

シンデレラ:はぁ……

N:次の日

デレンツ:よぉ。通りがかったから寄ってやったぞ。ありがたく思え。

シンデレラ:あ…いえ、あの、はい。ありがとうございます。
焼き菓子でしたら作りましたので、どうぞお持ち帰りください。

デレンツ:……あ、ありがとう(ぼそ)
い、いや。よくやった。
しかし、なぜお前が掃除なんかしているんだ?
そんなことは、召し使いにやらせればいいだろう。

シンデレラ:いえ、これが私の仕事なんです。

デレンツ:埃まみれになってしまうじゃないか!

シンデレラ:いいんです。わたし、掃除が好きなので。 

デレンツ:仕方ない。じゃあ、この「ダイソン」を使いたまえ。

シンデレラ:なんですかそれ!

デレンツ:充電はしといたから、すぐ使える。

シンデレラ:え、え、ちょっと待ってください。
これ、置いていかないでください!
見つかったら、お義母さまやお姉さまに怒られてしまいます!

デレンツ:気にするな!じゃあ、またな。

シンデレラ:気にします!
……ああ、もう。
行ってしまわれたわ。どうしましょう。

「ダイソン」って……、なに?

ルナシス:やぁ、シンデレラ!

シンデレラ:ルナシス様?どうされたのですか?

ルナシス:もちろん、君に会いに来たのさ!
他にどんな理由があるというんだい?

シンデレラ:ええ~…

ルナシス:おや、これは?

シンデレラ:これは先ほどデレンツ様がいらして、置いていかれたものです。
掃除道具のようなのですが、どう使ったらよいのかわかりません。

ルナシス:ハッハッハッ!
センスのかけらもない男だな!!
そんなものより、こっちの方がおすすめだよ。
「ルンバ」♪

さあ!踊ろう!シンデレラ!

シンデレラ:はい?
ちょっと待って!ちょっと待ってください!
「ルンバ」って何ですか?

ルナシス:うーん、やはりクローゼットで踊るのは狭くて仕方ないな。

シンデレラ:リビングルームですってばっ!

ルナシス:今週末、舞踏会がある。その時に、また踊ろう。

シンデレラ:行きません。行きませんから!

ルナシス:今日も、美し~い僕と会えて満足だろう?
じゃあ、迎えをよこすから、美しいこの僕と一晩中踊りあかそうじゃないか。

シンデレラ:すみませーん!わたしの話を聞いてください。
行きません。行けないんです!

ルナシス:おや、なぜだい?

シンデレラ:わたし、実はドレスや靴を持っていないんです。

ルナシス:なんだ、あれは借り物だったのか。
気にすることはないよ!

任せたまえ、使いの者に一番上等なドレスを用意させよう!
いや、センスが最高にいい「この僕」が選んだ方がいいな!!

シンデレラ:それは困ります!
それと、この「ルンバ」ってなんですか?

ルナシス:ああ、充電しといたから、すぐ動くよ。ほら。

シンデレラ:わぁ、本当!
…って、なんで勝手に動いてるんですかー!
こわいです!

ルナシス:掃除が終われば、僕と同じで賢いから自分で家に帰るよ。

シンデレラ:どーゆーこと?ねぇ、どーゆーこと?

ルナシス:さて、そうと決まれば城に戻って、コーディネートしてこよう。
楽しみに待っていてくれよ、僕のシンデレラ。

シンデレラ:すいません、「ダイソン」と「ルンバ」持って帰ってください!

……また行っちゃった。なんなの、あの二人。
あと、これどうするの。

「ルンバ」ずっと動いてるし……

こわい………

ああ!!
しかも、外に、
「デレンツ・アクヤク・ネクロマンサー・リーゼロッテ」と
「 ルナシス・ホワイトタイガー・ローズマリー」の落とし物が!!

も~~、仕事増やさないでくださいよ~!!

N:また次の日ー

デレンツ:おはよう。プリンセス。

シンデレラ:デレンツ様。おはようございます。
今日はまたお早いんですね。

デレンツ:朝一(あさいち)会いたくなって……(咳払い)
ばかもの!に、に、日課の散歩だ!

シンデレラ:すごく目立つお散歩ですね。
でも、今日も「デレンツ・アクヤク・ネクロマンサー・リーゼロッテ」の
艶(つや)やかでりりしい姿に、惚れ惚れしますわ。

デレンツ:り、りりしい?

あ、ありがとう(ぼそ)

シンデレラ:まぁ落とし物もありましたけど(ぼそ)

デレンツ:なんだ?

シンデレラ:いえ、なんでもありません。
あ!そうですわ。あの、ダイソン?
四苦八苦して使ってみたのですが、もう動かなくなってしまいました。

デレンツ:使ってくれたのか~~……
お前は素直だな。
す、す、好き……、いや嫌いではない!

シンデレラ:ですので、持って帰ってくださるとありがたいのですが……

デレンツ:また充電してきてやろう。

お、お前のためじゃないからなっ!

シンデレラ:いえ、もう大丈夫ですので。
それよりこんなに早い時間に……。
デレンツ様、国務のほうは?

デレンツ:だらだらとやるのは愚か者のすること。
俺は朝一にすべて終わらせておく。
将来、国王となるために当然なすべきことだ。

シンデレラ:さすがですわ。
やはり、将来国王となる資質がおありですね。

デレンツ:そ、そうだろう。
あー、だが、そ、そのためにはだなっ、
その、俺を支えてくれる妃だなっ
必要だなっ!
だな!

シンデレラ:そうですわね。内助の功。これは重要です。

デレンツ:だから、俺の……(咳払い)
ああ、そ、そーいえば、散歩をしていたら花が落ちていたぁぁ。
これをお前にやろう。

シンデレラ:まぁ綺麗な白いバラ!ありがとうございます!

デレンツ:女性はバラが好きと聞くからな。

シンデレラ:私、お花はみんな大好きです♪

デレンツ:そうか。……かわいい(ぼそ)
あ、いや!
なんだ、そのー、
し、白いバラの花言葉を知っているか?

シンデレラ:いえ、なんでしょう。

デレンツ:(ものすごく小さな声&早口で)「私はあなたにふさわしい」

シンデレラ:はい?もう一度教えていただけますか?

デレンツ:一度で聞き取れ!

シンデレラ:申し訳ございません……

デレンツ:いやぁ、それにしても、バラを拾っていたら、なかなかの量だった。
バラとはこんなに道端に落ちているものなのか。
ハッハー!
よし、すべてお前にやろう。
ふむ。ただ、この家には入り切りそうにないな。
外においておくから、好きなだけ持っていくがいい。

シンデレラ:え、外?
えええええ!馬車10台分?!
こんなに、いりません!

デレンツ:バラの花で風呂にはいるといい。
肌がツヤツヤになって、また一段と美し……ゲホゲホ!
まったく問題ない。
いいか、確かに渡したぞ。
ではダイソンを充電したら、また持ってきてやる。

シンデレラ:あの、ほんとうにもう結構ですので……、
って、もういない!はやい!
どーするの、このバラ……

ーデレンツ退場

ルナシス:グッモーニン!マイプリンセス!

シンデレラ:ルナシス様……、もお散歩ですか?

ルナシス:君に会いにきたんだよ!
今日も、君も僕も美しいね!

シンデレラ:はぁ……
あの、ルナシス様は、国務の方は大丈夫なのでしょうか。

ルナシス:あんなものは、僕の美しいサインをすればいいだけだ!
ペンも、書類も大喜びさ!!

シンデレラ:そうですか……

あ! あの「ルンバ」?
ようやく止まったので持って帰っていただけますか?
私はやっぱり、箒や水拭きで掃除するのが好きなんです。

ルナシス:今日は君にプレゼントがあるんだよ!さぁ。

シンデレラ:聞いてます?

ルナシス:ほうら!!

シンデレラ:あ、赤いバラ!綺麗……

ルナシス:花言葉は「あなたを愛してます」だよ。
ぴったりだね!

シンデレラ:はぁ……

ルナシス:おや?
この馬鹿みたいに、たくさんの白いバラはどうしたんだい?

シンデレラ:さきほど、デレンツ様からいただきまして。

ルナシス:またあいつか!
量があればいいってもんじゃない。
なんだ、棘もそのままじゃないか。
相変わらず、無粋(ぶすい)なやつだな。

まだ馬車にいれたままか。
あれは、そのまま引きあげさせることにするよ。

シンデレラ:それは大変助かります。

ルナシス:バラは一本でも、気持ちは伝わるんだ。
ほら、髪につけると、とても似合うよ
(ぐいと近づく)

シンデレラ:っ!

ルナシス:やっぱり。
君の輝かんばかりのブロンドの髪にぴったりだ。
実に美しい。

シンデレラ:あ、ありがとうございます。

ち、近っ!近いっ…!

ルナシス:僕のブロンドヘアも、あの太陽より輝いているだろう?

シンデレラ:そうですわね……

ルナシス:じゃあ、また来るよ。シンデレラ。

シンデレラ:あの、お二人とも私をからかっていらっしゃるんでしょうか。

…って、もういない!はやい!
なんで?
はあ~~~~~~

ーここからテンポよく

N:そのまた次の日

デレンツ:プリンセス、夜の散歩のついでに寄ってやったぞ。

ルナシス:シンデレラ!今日もかわいいね!

シンデレラ:いえ、あの……

N:さらに次の日

デレンツ:昼の散歩もいいもんだな。
ど、ど、どうだぁ、僕の馬に乗ってみみみみみ、たいだろう?!

ルナシス:ボンジュール!僕の馬でドライブしないかい?

シンデレラ:けっこうです。

N:さらにさらに次の日

デレンツ:お前に似合いそうな首飾りを持ってきてやったぞ。
いまつけてやるrr……みろ。

ルナシス:シンデレラ!君のために作らせた指輪を持ってきたよ。
さぁ、左手の薬指をだして。

シンデレラ:なぜ左手の薬指……

N:そのまたさらにさらに次の日

デレンツ:ん?気分でも悪いのか。
バラの風呂には入っているのか?

そうか、もうバラの花がないんだな。
よし、いますぐ拾ってきてやろう!

ルナシス:おや、今日はちょっと疲れているようだね。
僕がマッサージをしてあげよう!

シンデレラ:すみません、そろそろ察してください……

デレンツ:待ってろよ!
あ、いや!
お前のためじゃないからな!

ルナシス:またくるよ!美しい僕が君のために!

シンデレラ:ああ、もうダメ!
お義母さまとお姉さまたちには申し訳ないけど、このままだと、私おかしくなる!
どうしたら……

そうだわ。

N:数日後、城の中では―

ルナシス:僕のプリンセスはいったいどこにいったんだ!
こんな美しい僕をおいていくなんて!

そうか、僕に見つけてほしいんだね。
わかったよ、シンデレラ!
絶対絶対見つけ出すよ!

デレンツ:いいか!国中の総力を掛けて、全力でシンデレラを探し出すんだ!
一番に見つけた者には、好きなだけ褒美をあたえる!!

ー山奥にいるシンデレラ

【SE 山奥の小鳥のさえずり】

シンデレラ:はぁ、全てを捨てて山奥に夜逃げして大正解だったわ。
やっぱり、王子様と結婚すれば幸せになれるなんて、ただの幻想ね!

私はもう少し「シングルライフ」をエンジョイしましょ♪

N:こうして、シンデレラは山奥の田舎町に引っ越し、
ようやく平穏な暮らしを手に入れたのでした。

めでたし、めでたし。

そして、シンデレラの苦難は続く。

【終演】

2025.2.16加筆修正

【続編】シンデレラと二人の魔女