シンデレラと二人の王子【おとぎ話・コメディ】

【登場人物】[0:1:2]
・シンデレラ:あのシンデレラですが、振り回されます。ナレーション兼ねる。
・デレンツ王子(双子):ウルトラめんどくさいツンデレ
・ルナシス王子(双子):スーパーうざいナルシスト

※王子役は、どれだけ鬱陶しいかの勝負です。大げさにどうぞ。
※約30分。ミュート禁止。アドリブOK。
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N:今宵はお城で舞踏会。シンデレラの姉たちは着飾って出ていくものの、シンデレラにはドレスがありませんでした。
舞踏会に行きたがるシンデレラを、魔法使いのおばあさんが助け、かぼちゃの馬車に乗り、無事お城に着くことができました。

【SE 舞踏会BGMスタート お城の中にいる間、舞踏会のBGMはずっと流れている】
※チャイコフスキー「くるみ割り人形」より花のワルツ

【ハープの音が終わったところで、モノローグ】

シンデレラ(М):はじめての舞踏会。ドレスも何もなかった私が、あの魔法のおかげで、まさかお城に来ることができるなんて夢のよう……。ドキドキするわ。でも、この姿も12時まで。約束は絶対守らなくっちゃ。

ー城内へはいるシンデレラ

シンデレラ(М):ああ、なんて素敵なの。なにもかもが眩しいわ。こんなところで素敵な王子様と出会えたら……。でも、私、ダンスもしたことはないし、どこにいたらいいのか……。美しいお姫様もいっぱい。せっかく来られたけど、私なんかがここにいても……。

ーオロオロしているところ、人にぶつかる。

シンデレラ:あ!!も、申し訳ございません!

デレンツ:なんだお前は、ふらふらと。ほぉ、場慣れしてないようだな。(ジロジロ)しかし…。
ふむ。僕が踊ってやってもいいぞ。断ることなど許されない!

シンデレラ:ええ?
シンデレラ(M)素敵な方だけど、態度が横柄…。この方はいったい……。

デレンツ:さぁ、こっちへ来るのだ!

シンデレラ:ちょっ…ちょっと待ってください!

ー踊るデレンツとシンデレラ

【SE できればBGMを大きめにして踊っているような雰囲気に。その後、小さくする】

デレンツ:どうだ、満足か。お前の名前を教えろ。

シンデレラ:あ、ありがとうございました。私はシンデレラと申します。

デレンツ:なるほど、シ、シシシシンデレ…(照れて言えない)
わかった。覚えておこう。じゃあな、プリンセス!

シンデレラ:あ、あなたは…!行ってしまわれたわ。

シンデレラ(M):びっくりした。いきなりダンスなんて……
少し強めだったけどちゃんとエスコートしてくださったし。
でも、ドキドキがとまらない。少しどこかで休めないかしら。

ルナシス:おや、お嬢さん、気分でも悪いのかな?

シンデレラ:え?い、いえ、大丈夫です。どうぞお構いなく。
あら、さきほどの方ですか…?

ルナシス:なにを言っているんだい?いま、美しい僕と美しい君の運命の出会いの瞬間じゃないか!
僕の名前はルナシス。この国で、いや、世界で一番美しい王子だ!

シンデレラ:王子様?!それは大変ご無礼なことを!し、失礼いたします!

ルナシス:おっと。逃がさないよ。君の名前を聞かせてほしいな。

シンデレラ:さきほども申し上げましたが…。シンデレラと申します。

ルナシス:シンデレラ!ああ、シンデレラ!僕のハートに刻み込んでおこう!

シンデレラ(M):どういうことかしら。先ほどの方と顔はそっくりだけれど、服装も態度も違う……。

ルナシス:僕の名前はもう覚えたね。さぁ言ってごらん?

シンデレラ:ル、ルナシス様。

ルナシス:そう!その通りだ!さぁ、踊ろう!

シンデレラ:ええ!またですか?さっきも踊りましたぁぁぁぁ!

ー踊るルナシスとシンデレラ
【間】

シンデレラ:(息切れ)ちょっ…も、申し訳ありません…(咳き込む)
少し休ませていただいてもよろしいでしょうか(息切れ)

ルナシス:なぜだい?僕は君となら一晩中でも踊れるよ。

シンデレラ:(息切れ)お、王子様は舞踏会に慣れていらっしゃると思いますが、私は、はじめてなので。もうかれこれ3時間近く踊り続けているのではないかと……
え、3時間…?
いけない!もうすぐ12時だわ!帰らなくちゃ!

ルナシス:どうしたんだい?シンデレラ!

シンデレラ:あの、本日は大変楽しませていただきました!
12時までと約束してありますので、これで失礼いたします!

ルナシス:待って!こんなに美しい僕を置いていくのかい?!

デレンツ:どこに行くんだ!プリンセス!

シンデレラ:え、ええ?王子様が二人いる?!どういうこと?

【SE 鐘の音】

シンデレラ:ああ、ダメ!時間がない!

ー階段を駆け下りる

シンデレラ:あ! 靴が!!

ー探しに来る二人の王子

ルナシス:シンデレラ、キミはなんて足が速いんだ。アスリートなのか?ドレスを来てこの階段を駆け下りるなんて、素晴らしい。

デレンツ:なぜ僕に挨拶なしに帰ってしまったのだ!!…ん?この靴は………

ルナシス:っ!!(デレンツから靴をとる)なんて美しい靴なんだ。彼女にピッタリだ。

デレンツ:っ!!(ルナシスから靴をとる)返せ、ルナシス!これは僕のだ!

ルナシス:なんだ?デレンツ。珍しいな。お前がそんな態度を見せるとは……
そうか。さては、彼女に惚れたな?

デレンツ:そ、そそそんなことはない!

ルナシス:僕は彼女に決めたよ。必ず僕のプリンセスとして迎え入れてみせる。

デレンツ:ぐっ……

ルナシス:いいんだよね?

デレンツ:ルナシス。勝負だ。

ルナシス:そう来なくっちゃ。よし、どっちが先に彼女を落とすか勝負だ。

デレンツ:ああ。

【間】

N:そして次の日

シンデレラ:ああ、昨日はほんとにびっくりした。王子様がふたりいらっしゃったなんて。
ご兄弟なのかしら。それとも、お顔はそっくりだったから、双子とか…?
お二人とも魅力的な王子様だったけど、ちょっと癖がありすぎる。
ガラスの靴の片方を置いてきてしまったのは気になるけど、もう会うこともないでしょうから、一夜(ひとよ)の夢だったと思うことにして、いつも通りお掃除、洗濯に励みましょ。
お義母さまやお姉さまにはつらくあたられるけど、それなりになんとかこなしているわ。高望みはだめね。

【間】
【SE 馬の歩く音】
ーデレンツ、シンデレラの家を見つける

デレンツ:ここか……。お前たちよくやった。
やはり、プリンセスの家を見つけたのはあいつより僕のが先だったな。……しかし、なんとも小さな家だな。

失礼する!(勝手に入ってくる)

シンデレラ:え…?あ!お、王子様。まさか!
こんな辺鄙(へんぴ)なところにいらしてよろしいのですか?

デレンツ:気にするな。

シンデレラ:せめてお忍びで町にいらっしゃるとか……

デレンツ:僕はそんな器の小さい男ではない!

シンデレラ:いえ、そういうことではなく……

デレンツ:なんだ?セキュリティの心配をしているのか。僕にはいつでもかけつけてくる「アルソック」がついている。それに僕は強い。まったく問題ない!

シンデレラ:「アル?ソック?」…? そ、そうですか……。
ところで、王子様はルナシス様ででいらっしゃいますか?

デレンツ:あんなナルシスト野郎と一緒にするな!なぜあいつと双子なのか。まったくもって不愉快だ!

シンデレラ:双子だったのですね。知りませんでした。それではあなた様のお名前は……

デレンツ:僕の名前は国中の者が知っているはずだが、敢えて言おう「デレンツ」と!
そして、敢えて言おう、ルナシスは、カスであると!!

シンデレラ:デレンツ様

デレンツ:そうだ。昨晩はなぜ僕に挨拶もなしに勝手に帰った。

シンデレラ:申し訳ありません。12時までと約束してあったものですから。

デレンツ:ふむ。約束を守るタイプか…。嫌いじゃない。

シンデレラ:はぁ。ありがとうございます。

デレンツ:ああ、そうだ。あ~……、これは、その~、お前の靴か。

シンデレラ:あ!そうです。昨日片方を落としてしまって。
もしやわざわざ届けにきてくださったのですか?ありがとうございます!

デレンツ:ま、まぁ?気にするな。そ、そうだな…、な、なかなかいいセンスをしているな。
ドレスもヘアスタイルも……

シンデレラ:おそれいります。
ですが、あの時はなんといいますか、たまたま、その……

デレンツ:言い訳は必要ない。僕は細かいことは気にしない。

シンデレラ:あ、あの…、失礼かと思いますが、お茶でもいかがでしょうか。
靴をわざわざ持ってきてくださったお礼と言いますか……。
私、さきほど焼き菓子を作りましたので。

デレンツ:て、手作りスイーツか……。

シンデレラ:お口に合わないと思いますが、こちらでございます。

デレンツ:いただこう。(食べる)こ、これは……

シンデレラ:やはり、お口に合いませんでしたか?申し訳ありません!

デレンツ:い、いや、うまい(ぼそ)

シンデレラ:え?

デレンツ:美味しいと言っているのだ!何度も言わせるな!

シンデレラ:あ、ありがとうございます!

デレンツ:あ、ああ~、その~、そうだな。僕の自慢の馬でも見るか?

シンデレラ:え?

デレンツ:さあ、こっちだ(ぐいっとシンデレラを外へ)

シンデレラ:あ!(引っ張られる)

デレンツ:見たまえ。これが僕の馬だ。

シンデレラ:黒い馬…。毛並みがつやつやして、とてもりりしいですわ。王子様にぴったりな素晴らしい馬です!

デレンツ:りりしい…?あ、ああ…そ、そんなことはない、ことはない、ことはない。いやある!!
(ぼそぼそ言うものの、最後言い切る)

シンデレラ:とても素晴らしいです。この馬の名前はなんですか?

デレンツ:「デレンツ・アクヤク・ネクロマンサー・リーゼロッテ」だ!

シンデレラ:え?アクヤク?ネクロマンサー?…え?

デレンツ:今日はとにかくその靴を返しに来ただけだ。
「落とし物は交番に」とも思ったが、気にしているだろうと思ってな。
べ、別にお前に会いに来たわけではないぞ!勘違いするなよ!

シンデレラ:はぁ…。ありがとうございます。

デレンツ:まぁ、その、なんだ。今日のところは失礼する。
その焼き菓子をまた食べにきてやる。しっかり作っておくんだな!

シンデレラ:わ、わかりました。

ーデレンツ退場

シンデレラ:びっくりした。まさか、王子様がいらっしゃるなんて……

ルナシス:やぁ、シンデレラ!

シンデレラ:ルナシス様?どうされたんですか?
さきほど、デレンツ様がいらしてちょうど帰られたところですが。

ルナシス:もちろん知っているよ。あいつの後をついてきたんだ。
ほら、あの馬で。美しい僕の馬だよ。見てごらん。

シンデレラ:ああ、白馬!なんて美しいんでしょう!

ルナシス:そうだろう!そうだろう!そう僕にしか、そう、この「僕にしか」似合わない美しすぎる愛馬だ。いや、僕の方が美しいか!
名前は、「ルナシス・ホワイトタイガー・ローズマリー」さっ!

シンデレラ:なんだか、いろいろ混ざっていますね…。でもまさに白馬の王子様。

ルナシス:その通り!僕は!あの!あの!白馬の王子だ!!!
さて、中に入って、ちょっと鏡をみてもいいかい?馬に乗るのは気持ちがいいが、ヘアスタイルが乱れるのはたまにキズだ。

シンデレラ:え、ちょっ…!!

ルナシス:なんだい、ここは。クローゼットかな?

シンデレラ:リビングルームです!

ルナシス:鏡はきれいに磨いてあるね。僕の顔がさらに輝いてみえるよ。

シンデレラ:ありがとうございます。…って喜んでいいのか、わからない!

ルナシス:うーん、やはり、今日の僕も一段と美しい。鏡が嫉妬しているよ。

シンデレラ:はぁ……。

ルナシス:もちろん、君もだよ。シンデレラ。

シンデレラ:ありがとうございます(引き気味)

ルナシス:おや?これは?

シンデレラ:あ、それは私が作りました、焼き菓子です。

ルナシス:なるほど?ふむ(食べる)
これは……最高だ!僕への愛がつまった味がする!

シンデレラ:そうですか…?

ルナシス:これはすべて僕へのプレゼントだね。喜んでいただくよ。

シンデレラ:気に入っていただけたのでしたら、はい。

ルナシス:さて、君の家もわかったし。今日はこれで失礼するよ。シンデレラ。

シンデレラ:いえ、あの、ご無理なさらずとも大丈夫ですので。

ルナシス:君は照れ屋なんだね。かわいいな。でも恥ずかしがることなんてひとつもない。なぜなら!僕が美しいからさ!!!

シンデレラ:よくわかりませんが……

ルナシス:それでは、美しいシンデレラ!また明日も来るからね。この眩しすぎる僕が!

シンデレラ:はぁ……

N:次の日

デレンツ:よぉ。通りがかったから寄ってやったぞ。ありがたく思え。

シンデレラ:あ…いえ、あの、はい。ありがとうございます…。
焼き菓子でしたら、また作りましたので、どうぞお持ち帰りください。

デレンツ:…あ、ありがとう(ぼそ)
い、いや。しかし、なぜお前が掃除なんかしているんだ?
そんなことは、召し使いにやらせればいいだろう。

シンデレラ:いえ、これが私の仕事なんです。

デレンツ:ホコリまみれになってしまうじゃないか!

シンデレラ:いいんです。私、掃除好きなんで。 

デレンツ:仕方ない。じゃあ、この「ダイソン」を使いたまえ。

シンデレラ:なんですかそれ!

デレンツ:充電はしといたから、すぐ使える。じゃあ、またな。

シンデレラ:え、え、ちょっと待ってください。これ、置いていかないでください!
見つかったら、お義母さまやお姉さまに怒られてしまいます!

シンデレラ:行ってしまわれたわ。どうしましょう。…ダイソンって…なに?

ルナシス:やぁ、シンデレラ!

シンデレラ:ルナシス様?どうされたのですか?

ルナシス:もちろん、君に会いに来たのさ!他にどんな理由があるというんだい?

シンデレラ:ええ~…

ルナシス:おや、これは?

シンデレラ:これは先ほどデレンツ様がいらして、置いていかれたものです。掃除道具のようなのですが、どう使ったらよいのかわかりません。

ルナシス:ハッハッハッ!センスのかけらもない男だな。
こっちの方がおすすめだよ。「ルンバ」♪
さあ!踊ろう!シンデレラ!

シンデレラ:はい?ちょっと待って!ちょっと待ってください!ルンバって何ですか?

ルナシス:うーん、やはりクローゼットで踊るのは狭くて仕方ないな。

シンデレラ:リビングルームですってばっ!

ルナシス:今週末、舞踏会がある。その時に、また踊ろう。

シンデレラ:行きません。行きませんから!

ルナシス:今日も美しい僕と会えて満足だろう?
じゃあ、迎えをよこすから、美しいこの僕と一晩中踊りあかそうじゃないか。

シンデレラ:すみません!私の話を聞いてください。行きません。行けないんです!

ルナシス:おや、なぜだい?

シンデレラ:私、ドレスや靴、実は持っていないんです。

ルナシス:なんだ、あれは借り物だったのか。気にすることはないよ!
任せたまえ、使いの者に一番上等なドレスを用意させよう!
いや、センスが最高にいい、「この僕」が選んだ方がいいな!!

シンデレラ:それは困ります!
それと、この「ルンバ」ってなんですか?

ルナシス:ああ、充電しといたから、すぐ動くよ。ほら。

シンデレラ:わぁ、本当だわ!…ってなんで勝手に動いてるんですかー!こわいです!

ルナシス:掃除が終われば、僕と同じで賢いから自分で家に帰るよ。

シンデレラ:どーゆーこと?ねぇ、どーゆーこと?

ルナシス:さて、そうと決まれば城に戻ってコーディネートしてこよう。
楽しみに待っていてくれよ、僕のシンデレラ。

シンデレラ:すいません、「ダイソン」と「ルンバ」持ってかえってください!

……また行っちゃった。なんなの、あの二人。
あと、これどうするの。「ルンバ」ずっと動いてるし…こわい…。

あ!!しかも、外に、「デレンツ・アクヤク・ネクロマンサー・リーゼロッテ」と「 ルナシス・ホワイトタイガー・ローズマリー」の落とし物が!

もう、仕事増やさないでくださいよ~。

N:また次の日ー

デレンツ:おはよう。プリンセス。

シンデレラ:デレンツ様。おはようございます。今日はまたお早いんですね。

デレンツ:朝一に会いたくなって……(咳払い)に、に、日課の散歩だ!
いや、馬がこの散歩ルートを覚えてしまったのでな。仕方ない。

シンデレラ:すごく目立つお散歩ですね。
ああ、今日も「デレンツ・アクヤク・ネクロマンサー・リーゼロッテ」の艶(つや)やかでりりしい姿に、惚れ惚れしますわ。

デレンツ:り、りりしい?あ、ありがとう(ぼそ)

シンデレラ:まぁ落とし物もありましたけど(ぼそ)

デレンツ:なんだ?

シンデレラ:いえ、なんでもありません。あ!あの、ダイソン。あのあと四苦八苦して使ってみたのですが、もう動かなくなってしまいました。

デレンツ:使ってくれたのか…。お前は素直だな。す、す、好き…、いや嫌いではない!

シンデレラ:ですので、持って帰ってくださるとありがたいのですが……

デレンツ:また充電してきてやろう。お、お前のためじゃないからなっ!

シンデレラ:いえ、もう大丈夫ですので。
それよりこんなに早い時間に……。デレンツ様、国務のほうは?

デレンツ:だらだらとやるのは愚か者のすること。僕は朝一にすべて終わらせておく。将来国王となるために当然なすべきことだ。

シンデレラ:さすがですわ。将来国王となる資質がやはりおありですね。

デレンツ:そ、そうだ。あー、そ、そのためにはだなっ、僕を支えてくれる妃だなっ、必要だなっ!

シンデレラ:そうですわね。内助の功。これは重要です。

デレンツ:だから、僕の……(咳払い)
そ、そーいえば、散歩をしていたら花が落ちていたぁぁ。これをお前にやろう。

シンデレラ:まぁ綺麗な白いバラ!ありがとうございます!

デレンツ:女性はバラが好きと聞くからな。

シンデレラ:私、お花はみんな大好きです♪

デレンツ:そうか。……かわいい(ぼそ)
あ、いや!なんだー、そのー、し、白いバラの花言葉を知っているか?

シンデレラ:いえ、なんでしょう。

デレンツ:(ものすごく小さな声で)「私はあなたにふさわしい」

シンデレラ:はい?もう一度教えていただけますか?

デレンツ:一度で聞き取れ!
いやぁ、それにしても、バラを拾っていたら、なかなかの量だった。
バラとはこんなに道端に落ちているものなのか。すべてお前にやろう。
ふむ。ただ、この家には入り切りそうにないな。
外においておくから、好きなだけ持っていくがいい。

シンデレラ:え?
えええええ!馬車10台分?!こんなに、いりません!

デレンツ:バラの花で風呂にはいるといい。肌がツヤツヤになって、また一段と美し……ゲホゲホ!まったく問題ない。いいか、確かに渡したぞ。ではダイソンを充電したら、また持ってきてやる。

シンデレラ:あの、ほんとうにもう結構ですので……、って、もういない!はやい!
もう、どーするの、このバラ……。

ーデレンツ退場

ルナシス:グッモーニン!マイプリンセス!

シンデレラ:ルナシス様…もお散歩ですか?

ルナシス:君に会いにきたんだよ!今日も、君も僕も美しいね!

シンデレラ:はぁ…。ルナシス様は国務の方は大丈夫なのでしょうか…。

ルナシス:あんなものは、僕の美しいサインをすればいいだけだ!書類も大喜びさ!

シンデレラ:そうですか……あ! あの「ルンバ」?ようやく止まったので持って帰っていただけますか?
私はやっぱり、箒や水拭きで掃除するのが好きなんです。

ルナシス:今日は君にプレゼントがあるんだよ!さぁ。

シンデレラ:あの、聞いてます?

あ、赤いバラ!綺麗……。

ルナシス:花言葉は「あなたを愛してます」だよ。ぴったりだね!

シンデレラ:はぁ……

ルナシス:おや、この馬鹿みたいにたくさんの白いバラはどうしたんだい?

シンデレラ:さきほど、デレンツ様からいただきまして。

ルナシス:またあいつか!量があればいいってもんじゃない。棘もそのままじゃないか。
相変わらず無粋(ぶすい)なやつだな。
まだ馬車にいれたままか。あれはそのまま引きあげさせることにするよ。

シンデレラ:それは大変助かります。

ルナシス:一本で気持ちは伝わるんだ。
ほら、髪につけると、とても似合うよ(ぐいと近づく)

シンデレラ:っ!

ルナシス:やっぱり。君の輝かんばかりのブロンドの髪にぴったりだ。実に美しい。

シンデレラ:あ、ありがとうございます。ち、近っ 近いっ…!

ルナシス:僕のブロンドヘアも、あの太陽より輝いているだろう?

シンデレラ:そうですわね……

ルナシス:じゃあ、また来るよ。シンデレラ。

シンデレラ:あの、お二人とも私をからかっていらっしゃるんでしょうか。
…って、もういない!はやい!はあ~~~~~~。

ーここからテンポよく

N:そのまた次の日

デレンツ:プリンセス、夜の散歩のついでに寄ってやったぞ。

ルナシス:チャオ!シンデレラ!今日もかわいいね!

シンデレラ:いえ、あの……

N:さらに次の日

デレンツ:昼の散歩もいいもんだな。ど、ど、どうだぁ、僕の馬に乗ってみみみみみ、たいだろう?!

ルナシス:ボンジュール!僕の馬でドライブしないかい?

シンデレラ:けっこうです。

N:さらにさらに次の日

デレンツ:お前に似合いそうな首飾りを持ってきてやったぞ。いまつけてやrrr……みろ。

ルナシス:シンデレラ!君のために作らせた指輪を持ってきたよ。さぁ、左手の薬指をだして。

シンデレラ:なぜ左手の薬指……

N:そのまたさらにさらに次の日

デレンツ:ん?気分でも悪いのか。バラの風呂には入っているのか。そうか、もうバラの花がないんだな。いますぐ拾ってきてやろう!

ルナシス:おや、今日はちょっと疲れているようだね。僕がマッサージをしてあげよう!

シンデレラ:すみません、そろそろ察してください……
ああ、もうダメ!
お義母さまとお姉さまたちには申し訳ないけど、このままだと、私おかしくなる!こうなったら!

N:数日後、城の中では―

ルナシス:僕のプリンセスはいったいどこにいったんだ!こんな美しい僕をおいていくなんて!
そうか、僕に見つけてほしいんだね。わかったよ、シンデレラ!絶対絶対見つけ出すよ!

デレンツ:いいか!国中の総力を掛けて、全力でシンデレラを探し出すんだ!
一番に見つけた者には好きなだけ褒美をあたえる!!

ー山奥にいるシンデレラ

【SE 山奥の小鳥のさえずり】

シンデレラ:はぁ、全てを捨てて山奥に夜逃げして大正解だったわ。
やっぱり、王子様と結婚すれば幸せになれるなんて、ただの幻想ね!

私はもう少しシングルライフをエンジョイしましょ♪

N:こうしてシンデレラは山奥の田舎町に引っ越し、ようやく平穏な暮らしを手に入れたのでした。

めでたし、めでたし。でも、続く。

Fin.
【続編】シンデレラと二人の魔女